自民党・公明党両党は、2015年度に所得税の最高税率40%を45%に、相続税の最高税率を50%から55%に引き上げる方向で最終調整に入っている。その理由は、14年に8%、15年に10%と消費税を増税することにより、低所得者層の税負担が相対的に増えることの不公平感を是正するためだという。

しかし、富裕層への嫉妬心を「不公平感」と呼んで正当化し、高い税率をかけて「格差を是正」するのは正しいことなのか。低所得者の雇用を生み出す能力を持っているのは、経営者であったり、盛んに消費を行う能力のある高所得者のはずだ。

日本に先立って富裕層増税を打ち出したフランスでは、富裕層や経営者の国外脱出が相次いでいる。フランス1の富豪で高級ブランド、ルイヴィトンCEOのアルノー氏はベルギーの国籍取得を申請し、国民的俳優のドパルデュー氏はロシアの国籍を取得した。

イギリスではロンドン市長が「ロンドンはフランスの皆さんを歓迎します!」とキャンペーンをはるなど、フランスから出ていこうとする富裕層を呼び込む構えを見せている。

ただ、フランスは現在、年収100万ユーロを超える人への所得税率を現行の約40%から75%へ引きあげる法案について、こうした富裕層の国外脱出の動きと、憲法会議が昨年末に違憲判決を下したこともあり、見直す方向に入っているという。

また、日本でも、自民党支持者の中の富裕層の比率は高めのため、所得税増税への反発が根強くある。そのため公明党幹部は、本音では所得税率を最高50%に持っていきたいが、「それは無理だろう」と話しているという。(東京新聞13日付)。

安倍政権は20兆円規模の経済対策や2%インフレ目標の導入など、景気回復を目指した政策を打ち出している。けれども、消費税も所得税も相続税も、すべて増税は景気を悪化させる要因になる。景気を温めると同時に冷や水を流し込むような矛盾することはやめて、景気を回復させることによる自然な税収増と、逆に減税することによりイギリスのように海外の富裕層を呼び込むことで税収増を目指すべきではないか。(居)

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