2012年の経済は、失望と希望が入り乱れる不思議な一年であった。

失望とは、財政政策であり、希望とは、金融政策だ。

財政政策は、消費税の増税が決まってしまったことだ。増税の条件に経済成長3%を挙げた景気弾力条項を使って、増税回避の議論が出てはいる。しかし、仮に経済成長3%を実現したとしても、その段階で増税をすれば、せっかくの景気回復は消し飛んでしまうはずだ。1997年の増税で景気を腰折れさせた歴史に学ぶことができるかどうかが今年の焦点となろう。一方で、10兆円規模の公共事業を行うことは、一定の評価はできるが、一部から批判が出ているように、単なるバラマキ財政にならないよう、投資効果の高い分野に戦略的にお金を使う必要がある。未来産業につながる対象であれば、さらに大規模にしてもかまわないだろう。

金融政策は、安倍政権の金融緩和に期待が高まる。昨年は、日銀が1%をめどとした物価目標を掲げるという、政策転換が実現した年ではあった。さらに、そこに積極的な金融緩和を打ち出していた安倍政権が誕生した。先行して値上がりしている株価の動向が、その期待のほどを示している。

あとは、今春に決まる日銀総裁人事が誰になるかに注目だ。

安倍政権の経済政策には、景気回復を見込める内容が数多く含まれている。

しかし、アベノミクスに対しては、左翼系メディアから早くもバブルとの批判は寄せられており、マスコミの批判にどこまで耐えられるかが問われる。

グローバルな視点では、米国とEUの衰退がますます明らかになる可能性が高い。両方とも深刻な財政問題を抱えており、その解決の糸口は見えていない。世界恐慌の可能性すらある。

一方で、中国経済の台頭がどこまで本格化するか。すでにバブルが崩壊したとの指摘もあり、中国経済の行方は決してバラ色ではない。ただ、東南アジアやインドを含めたアジア全体としては、少なくとも欧米よりは高い経済成長が期待できる。

アジア開発銀行の予測では、2050年にアジアのGDP(国内総生産)は、世界の52%になるという。

西洋の時代から東洋の時代へ――。

今、世界の文明バランスが大きく変化しようとしている。その東西の狭間に位置するのがわが国・日本だ。

日本はアジアの中で先行して西洋化した国である。その意味で、西洋の一員としての側面を持つ。一方で、東洋で最も歴史の古い伝統ある国でもある。この意味では、当然、東洋の一員でもある。

世界のパラダイムシフトの要にあたる日本にしかできないこと。それは東西の両文明の橋渡しをしつつ、新しい世界秩序のプランナーとして先頭を走る役割を持つことであろう。

2013年は、おそらく、そんな大きな新しい世界の枠組みを創り上げる動きが始まる1年となるはずだ。(村)

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2012年2月号記事 世界大恐慌を食い止めよ 「バランスシート至上主義」の罠

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2012年12月16日付本欄 【衆院選・投票を迷っている人へ(2)】あの政党に入れたらこうなる 「消費税」編

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