フランスから富裕層や起業家が逃げ始めている。5月に左派で社会党のオランド政権が誕生し、財政再建を目的として、所得1億円以上の富裕層に75%の所得税をかける増税の準備を進めているためだ。7日付ブルームバーグ日本版が報じている。

記事では、オランド政権が富裕層への増税を予定しているため、一線を退いた富裕層はスイスへ、起業家はベルギーやイギリスへ脱出するケースが増えているという。スイスの弁護士は、「オランド大統領が大幅な増税案を表明した今年はそうしたケースが例年の2倍程度に増えたと感じる」と証言している。起業家がいなくなってしまえば、ただでさえ失業率が10%超と高いフランスから、さらに雇用が失われてしまうだろう。

9月には、「ルイ・ヴィトン」の最高経営責任者である、フランス人のベルナール・アルノー氏がベルギー国籍取得を申請している。アルノー氏は資産が約3兆2000億円でフランスで1位、世界第4位の大富豪だ。メディアに税金逃れを疑われたアルノー氏は、「ベルギー国籍取得は投資のためだ」と否定している。アルノー氏はブリュッセル(ベルギー)にも自宅を持ち、国籍取得は認められる見通しだ。

高い税率を嫌って、富裕層が国外脱出を図るのはフランスだけではない。

日本の現在の所得税の最高税率は、ひと時の75%に比べれば小さい40%だが、野田首相が45%への増税を予定していた際は、一部の富裕層は税率20%のシンガポールなどへ脱出し始めていた。アメリカでも、オバマ大統領が所得税の最高税率を35%から40%に引き上げる動きを見せたところ、2011年の国籍放棄者が2010年に比べ1割強増えたという。

結局、税金が重い国からは富裕層が逃げ出していくということは、世界で共通しているわけだ。

現在、日本では衆院選で各党が様々な経済政策を主張しているが、民主党も自民党も消費税増税を前提に議論を組み立てている。だが、幸福実現党は消費税を将来的に廃止すると主張し、法人税を20%程度に引き下げ、贈与税・相続税を廃止するとしている。減税は立党当時の2009年から言っていることだ。

本当に景気を回復し、産業を活性化させたければ、まず税率を下げて富裕層を呼び込んで消費してもらい、起業家に雇用を生み出してもらうことが大切だ。(居)

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2012年5月12日付本欄 フランス「富裕層の国外脱出」に日本政府も学べ

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