筒井康隆氏の『時をかける少女』といえば、1965年に雑誌に登場して以来、何度も映像化され、現在の小・中学生にも読み継がれているロングセラー小説だ。今年8月に出版された同氏の『ビアンカ・オーバースタディ』(星海社)は、「2010年代の『時をかける少女』」として話題になっている。

平成の『ビアンカ・オーバースタディ』も、昭和の『時をかける少女』同様、少女が主人公である。放課後の実験室を舞台に、異国の血を引く少女・ビアンカ北町が未来人と出会い、時間旅行をする物語だ。

だが、未来人が主人公に語って聞かせる未来世界の様相は、かなり違っている。昭和の主人公・和子に対して未来人ケン・ソゴルは、遠い未来、「原子力の平和利用で、地球の文化は大きく飛躍」したと説明したが、平成のビアンカに対して未来人は、「原子力発電所の事故」による「人類の衰退」を告げるのである。未来人によると、日本で起きた原発事故以降も、中国などの開発途上国で作られた「脆弱な原発」による事故が「次つぎに起こった」というのだ。脱原発によって自然エネルギーに頼ったら、こんどはエネルギー不足で「企業の倒産が相次いだ」のである。

物語と現実を混同してはいけない。だが、この小説の予測は、意外にまっとうなのではないか。日本では民主党が12月4日公示の衆院選に向けたマニフェストで「2030年代に原発稼働をゼロとするよう、あらゆる政策資源を投入する」としている。脱原発政策による電気料金の値上げに、すでに日本の産業は悲鳴を上げ始めている。安全保障の面でも、将来的な核武装の選択肢を日本から奪ってしまうという意味で、「脱原発」は危険な道であると言えよう。(賀)

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