みんなの党は28日、次期衆院選に向けた公約集「アジェンダ2012」を明らかにした。公務員改革や構造改革を訴えてきた同党は、今回も「マクロの視点」に欠けた公約集になった。

致命的なのは、外交政策だ。中国の軍事的脅威が喫緊の問題であることを認識しておらず、「中国とは経済関係を強化し、人的交流・文化交流を拡大」「海上における連絡メカニズムを整備し、相互の信頼醸成に努める」としている。防衛力強化については、自衛隊の部隊の再編成のほか、「海上保安庁の体制強化」しか言っておらず、民主党とあまり変わらない。

「日米同盟体制を我が国の安全保障の基軸とする」と述べるが、日本独自の国防強化を言っていないため、「アメリカに守ってもらえばいい」という意識なのだろう。同党はTPPなどを含めた「攻めの開国」を進め、「東京をアジアの金融センターとする」という方針も打ち出している。経済規模からして日本が果たすべき当然の役割と言えるが、金融センターとなる国の防衛が疎かでは、誰も投資したがらないという観点が抜け落ちている。

経済では法人税を20%まで引き下げると訴えており、日銀法の改正とインフレ目標の設定で、ある程度の経済成長は望める。しかし、「2020年代の原発ゼロ」路線で安定した電力供給が可能かわからない。また原発ゼロを実現するために、「日本国民全員で徹底した省エネ、新エネルギーを促進」するとし、企業の省エネ設備導入に対する優遇措置をうたっているが、企業が海外に逃げて産業の空洞化が加速するリスクもあるだろう。

結局のところ、みんなの党の政策は、ビジネスを優遇して経済成長させるという合理化路線が大前提である。それが経済発展につながる場合もあるが、日本を国家として見て、その経済や防衛を考えるという視点を欠いている。「霞が関を解体・再編」し「地方自治体へ(権限・財源・人間)を移譲し、地域のことは地域で決定」するとしているが、地方丸投げの路線では、国の持続的な発展を支えるインフラ投資や都市の再開発はできないだろう。

みんなの党は、構造改革や企業政策に特化した「ニッチ政党」であり、全体として国のかじ取りを担えるだけの政策のパッケージは持っていないと言える。2010年の参院選では躍進したが、ブームが急速にしぼんでしまったところを見ると、やはり国を任すだけの力はないのだろう。

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