野田佳彦首相は14日、安倍晋三・自民党総裁との党首討論の中で「16日に衆院解散」を明言した。14日夕には政府・民主三役会議で「12月4日公示、12月16日投開票」の線が決まったが、一方で民主党内には激しい反発があり、野田首相交代論も含めて、きわどい攻防が続いてる。

党首討論で、安倍氏が「約束の期限は大幅に過ぎている」と、「近いうち解散」を表明しながらずるずる引き延ばす野田首相を追及。野田首相はこれに対し、「特例公債法案の今週中の成立」「衆院小選挙区の『0増5減』の法改正を今国会で実現し、来年の通常国会で大幅な定数削減を図る」ことを安倍氏が確約すれば、「16日に解散してもよい」と明言した。

安倍氏は党首討論後、定数削減に協力する考えを表明。政局は一気に「解散・総選挙」の流れに入った。

ただし、まだいくつかの変数が残っている。

まず、足もとの民主党議員らの激しい反発だ。年内解散に反対してきた民主党議員らは、輿石幹事長に両院議員総会の開会を求め、「野田降ろし」も視野に解散阻止を狙う。今後さらに離党者が出るのは必至と見られる。

さらに、「1票の格差」の問題はまだ残る。

今年10月に、2010年7月の参院選に関して、最高裁は「違憲状態」との判断を示した上で、「単に定数の一部の増減にとどまらず、都道府県単位を改めるなど、しかるべき立法措置を講じ、投票価値の不均衡を解消する必要がある」と述べ、制度の抜本的見直しを迫った。

今回、野田首相が提案する「0増5減」案が成立しても、16日解散の場合、現行区割りのまま選挙が行われることになる。そうなると、また「1票の格差」に関する訴訟が起こされた場合、「違憲、無効」の判決が出る可能性がある。これを根拠に、「現行区割りを改正しなければ違憲になり、選挙はできない」という意見が大勢になれば、解散・総選挙が先延ばしになる可能性が残っている。

「ドジョウ宰相」を自認し、のらりくらりと野党の攻撃、マスコミの攻撃もかわしながら、鳩山由紀夫氏、菅直人氏ら先輩首相よりも息長く首相を続けている野田氏が、このまま負けが必至と見られる総選挙に突入するのかどうか。民主党が「首のすげかえ」でさらに先延ばしを図ろうとするのか。自民党がここで一気に「政権奪回」に持ち込むのか。きわどい攻防戦が続く。(仁)

【関連記事】

2012年11月12日付本欄 【そもそも解説】なぜ野田首相は解散の意向を固めた?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5130

2012年9月22日付本欄 再選のドジョウ宰相、「近いうち解散」を「遠くない将来」へ転換

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4891