再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が7月1日、スタートした。

太陽光や風力、地熱、バイオマスなどで発電した電力を経済産業省が認定し、電力会社が買い取るもので、原発依存から脱却するために再生エネルギーによる発電の新規参入を促すのが狙いだ。

しかし、買い取り制度は、かなりの確率で失敗に終わるだろう。

経済産業省は、今年度中に認定するのは計250万キロワット超になると試算しており、原発約2基分にあたる。

太陽光は1キロワットあたり42円、風力は23円~58円、地熱は27円~42円で、電力会社が買い取る。買い取り価格は電気料金に転嫁されるため、結局は消費者の負担となる。標準家庭の今年度の負担増は平均87円となるが、今後普及がすすむほど、負担は増えていく。全量買い取りのため、参入する企業は、再生可能エネルギーで発電するほど、売り上げが立つ。しかし、その売り上げは、すべて家庭の負担となる。しかも、これは、火力発電の燃料コスト増による値上げとは別枠での負担増となる。

要するに、家庭の負担を原資とする補助金を、ソフトバンク、ローソン、ヤマダ電機といった再生エネルギー発電への参入企業にばらまくという話だ。

原発を再稼動させれば、これらの負担は必要ない。

長期的には、代替エネルギーの普及に向けた取り組みは重要だが、現段階において、供給体制やコストの問題で普及できないでいるものを、家庭の負担を強いる形で、無理やり市場に流通させる必要がどこまであるのか。

しかも、この政策は、同様の制度で先行しているドイツでは、すでに失敗している。

ドイツでは2000年に同様の制度を導入したが、消費者負担が増える一方となって、今年2月には全量買い取りを断念している。買い取り価格も段階的に引き下げることが決まっている。クリーンエネルギーの助成の約6割を太陽光につぎ込んできたにもかかわらず、全発電における太陽光の比率は、わずか3%にとどまっている。太陽光発電は、天候に左右される上、実際の発電量は発電容量の3割程度と非効率のため、結局、高くつく上、普及もしなかったのだ。

経営として採算が合わないエネルギーを、無理やり補助金で普及させても、最後には破綻する。

再生可能エネルギーの研究は必要である。しかし、現段階において普及するには時期尚早だ。研究開発への助成なら、話はまだ分かるが、電力の買い取りは明らかな間違いだ。再生可能エネルギーへの企業参入がブームになれば、それはバブルになる可能性が高いと言えよう。(村)

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2011年7月26日付記事 太陽光、風力…自然再生エネルギーは救世主たりうるか-エネルギー政策の基礎知識

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2900