6 歳未満男児の脳死判定で、日本臓器移植ネットワークが記者会見。写真:時事

2012年8月号記事

富山大学付属病院に入院していた6歳未満の男児が改正臓器移植法に基づいて脳死と判定され、心臓・肝臓・腎臓の臓器移植手術が6月に行われた。6歳未満の幼児の脳死判定は、国内で初めてとなる。

2010年7月に改正臓器移植法が全面施行されてから、本人が生前に拒否の意思表示をしていない限り、家族の同意があれば、15歳未満(生後12週未満を除く)の小児の移植医療が可能になった。

この法律の施行には、WHOから2010年5月に「臓器移植の自国内完結」が勧告され、海外渡航による小児の臓器移植を行うことが難しくなったという背景もある。今回の移植が、国内での小児の臓器移植を推進するとして賞賛する報道も多い。

この男児は事故による心肺停止の蘇生後、低酸素性脳症に陥って入院していた。医師から「重篤な脳障害をきたしている」と告げられた家族が、自発的に臓器提供を申し出たという。家族は「息子が誰かの体の一部となって、長く生きてくれるのではないか」とコメントを発表している。体の一部であっても生き続けて、それによって誰かの命が救われるのであれば、という親の気持ちも込められていることだろう。