東京都が尖閣諸島購入を決めた際に中国側からの抗議が少なかったように、この頃の中国政府は日本に対して比較的静かにしている。

重慶市トップの薄熙来氏が失脚して以来、共産党幹部の腐敗ぶりが国内外から注目されているのが一因だろう。先月の日中韓サミットで中国側が日本との直接会談を避けたように、中国政府は国民世論に影響する日中関係での失点を避けようと神経質になっているようだ。

薄氏のスキャンダルに加え、中国経済が目詰まりを起こす恐れもある。1日発表の製造業の指標は、欧州危機などにより成長ペースが鈍化していることを示している。

中国はこれまで、国有する銀行に公的資金を注入し、企業に半強制的に貸し付けさせることで、経済減速をごまかしてきた。だがこうした問題の先送りは、経済が突然クラッシュするリスクを高める。

中国専門家のペイ氏は、中国経済の「心臓発作」の可能性を挙げ、「現在の経済モデルは中国の長期的な繁栄を蝕むガンだ」と論じている(5月30日付 ザ・ディプロマット)。

共産党の統治が揺らぐ中で、日中関係の静けさが今後も続く保証はない。名誉挽回のために、中国政府がナショナリズムに訴え、強硬なスタンスを取る危険もあるからだ。新米国安全保障センターのカプラン上級研究員は「党内の党派争いが激化して、それぞれが愛国的なナショナリズムで競い合うようになったらどうなるだろう」と懸念を投げかけている(5月30日付 ストラトフォー)。

習近平氏の新国家主席就任を控え、人民解放軍が党内の権力闘争で幅を利かせ始めているという指摘もあり、外交のかじ取りは難しい。印政策研究センターのチャラニー教授は「どのシナリオでも、節度ある安定した中国の外交政策は望みがたい」と述べる(5月30日付 プロジェクト・シンディケート)。

日中関係が当座は穏やかだからといって、備えを怠ってはならないということになる。1日の産経新聞では元外交官の岡崎久彦氏が「この際、日本も、粛々と、尖閣の領有権主張強化、集団的自衛権の行使を含む日米同盟の強化などを進めていくのに良い機会だと思う」と述べている。

権力移譲を控えた中国が思うように動けない今のうちに、日本は防衛力の強化に真剣に取り組むべきである。

【関連動画】

2012年5月8日付記事 「隣国による侵略の野望を打ち砕け!」 イリハム・マハムティ氏 × 綾織次郎氏 パネルディスカッション【動画】

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【関連サイト】

いよいよ明日より! 2012年6月2日 全国ロードショー 『ファイナル・ジャッジメント』特設サイト