IAEA(国際原子力機関)が事務局長の天野之弥事務局長名でこのほど発表した報告書並びに、これを受けたISIS(科学国際安全研究所)報告書によると、イランの核開発は今年2月以降、2カ所の施設にて濃縮度20%の高濃縮ウランの製造活動を活発化させている。

両報告書の指摘では、イランの保有する高濃縮ウランは2月に指摘された109.2キロから145.6キロに増加、主に中部にあるナタンツ、フォルドゥの2施設で製造されており、特に地下施設のフォルドゥでの製造量が20キロ以上増えているとのことである。

IAEA報告書によればイランは遠心分離機を約3000保有しているとされる。ウラン鉱石を粉末状にした「イエローケーキ」から20%に濃縮ができるなら、遠心分離法やガス拡散法などを駆使すれば小型核兵器に転用できるとされる90%程度(最低20キロ程度で核分裂反応が発生)までの濃縮は比較的容易に可能だ。原子力発電用であれば3.5%以上の濃縮、実際は5%~8%程度のウラン濃縮で十分である。実用できるとされる核兵器1個を作るには濃度20%のウランが250キロ程度は必要であるとされ、「核兵器開発」へとイランが進んでいる実態は明白だ。

またイランは北朝鮮やロシアより戦術ミサイルや長距離ミサイルの兵器購入や技術協力なども行い、少なくともイラン国内から弾道ミサイルによってイスラエルへの攻撃がいつでも可能な戦力を保持している。ISIS報告書によれば、イランは3.5%の濃縮ウラン原料1249.3キロを保有しており、これを利用すれば短期間に核爆弾を製造できるという。

イランに対してイスラエルは、核兵器や核開発を南アフリカ共和国と過去に進めてきた。人工衛星の打ち上げにも通常とは反対側の西側への発射軌道で成功させるなど、ロケット技術の高さや、イスラエル空軍の戦力にも定評がある。イスラエルが過去にイラクやシリアの原子炉を核開発阻止の名目で空爆した経験から、イランの核施設への空爆も可能とみて訓練や準備をしているのは世界の軍事関係者の常識である。

さらには、イラク西部へ空軍部隊を2008年以降展開させているとも言われ、イスラエル政府のイラン爆撃の決断はいつか、と世界は見ている。ただ、イスラエル政府もイラン政府同様、相手の攻撃や報復攻撃がどの程度のものになるかを慎重に見極めたいようだ。

アメリカはイランに対する追加制裁期限を6月27日としている。オバマ大統領は選挙対策で先延ばしを進めているが、その期限まであと1カ月である。

イランとイスラエルとの和平は簡単にできることではない。中東の宗教的・民族的対立を乗り越えることも容易ではない。これを実現できるのは、ユダヤ教やイスラム教ですらも包み込む新しい価値観が必要だ。(弥)

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2012年3月号記事 アジアか中東か選択を迫られるアメリカ ホルムズ海峡封鎖vs.米欧経済制裁

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3740

【参考書籍】

幸福の科学出版ホームページ 『イラン大統領vs.イスラエル首相 中東の核戦争は回避できるのか』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=753