「念ずれば動く」。意思の力で物体を動かす念動力の話ではない。

米国のブラウン大や退役軍人省、ドイツ航空宇宙センターなどの「ブレーンゲート2」研究チームは、脳卒中で手足が麻痺した患者が「念じることでロボットの腕を動かす」実験に成功したと、17日付英科学誌ネイチャーに発表した。

約15年前に脳卒中のため手足がまひした58歳の女性の脳に小さな電極を埋め込み、脳からの信号をコンピュータを介して女性の脇に置いたロボットの腕に送る。この方法で、女性が念じるだけでコーヒーのボトルをつかみ、ストローで飲むことに成功した。

この研究チームは、6年前に、患者が念じるだけでパソコン画面のカーソルを動かす実験に成功している。脳の表面に付けた電極から送られる脳波のパターンをとらえ、この解析結果を基にロボットの腕を操作する実験は日本でもすでに成功している(大阪大・吉峰俊樹教授のグループ)。

脳波の変化に応じた皮膚電流の変化をとらえる装置(皮膚に装着)により、精神集中状態の脳波を検出して、コンピュータに送り画面を操作するthe Body Waveという商品もある。もし、脳の表面に電極を埋め込むタイプではなく、皮膚に装着するipodほどの小さな装置だとしたら…。脳波の変化に極めて敏感に反応する皮膚電流の変化をとらえ、それをコンピュータが解析して、介助するロボットを「念じる通りに動かす」。実用化・商用化は夢物語ではあるまい。

脳卒中や脊髄損傷で神経系統に障害がある患者にとって朗報となるだけではない。日本のもつ世界一の「ものづくり技術」がこの分野で花開けば、介護ロボット、家事支援ロボットや、地底開発や海底探索、はては宇宙空間で活躍するロボットの開発にもつながるだろう。科学技術立国が進むべき大きな方向性の一つだ。

政府は、国民から預かった大事な税金をばらまくのではなく、雇用を生み、新しい産業を立ち上げる方向に投資すべきであろう。未来に生き筋のある分野に集中的に投資した結果、景気が良くなれば、税収が増える。税収が増えれば増税は不要となる。(善)

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2011年11月15日付本欄 精神集中でコンピュータの画面を操作する装置

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3277

2011年2月28日付本欄 脳波でロボット操作ができるようになる

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1440

2011年1月号記事 2031年日本の未来構想(6)「一家にロボット数台」は当たり前

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=331