25日付日経新聞にイタリアのモンティ首相へのインタビューが載っている。

ユーロ危機は「克服された」との認識を示し、ユーロ共同債の発行も実現可能と強調した。

モンティ首相は27日に訪日し、野田首相らと会談する予定となっている。

モンティ首相によれば、イタリアは2013年の財政収支の均衡を実現するために、増税、歳出削減、年金の支給開始年齢引き上げなどの政策を整えたという。

ここだけ見ると、日本がやろうとしている方向とそっくりに思える。

しかし、モンティ首相は、今後は規制緩和などの成長戦略にターゲットを絞るとも言っている。この点は日本にはない視点だ。

先月、日銀が事実上のインフレ目標を導入するや株価が上昇基調に転じた。株価が上昇するということは、今後、将来見通しが楽観的になったことを意味する。それから各メディアの経済報道が様変わりし、強気の経済見通しがあふれるようになった。

金融緩和というプラスの政策がいかに効くかが実証されたわけだ。うまくいけば、景気は好転し、企業活動が活発化する。すると、結果的に税収は増えていくことになる。つまり、財政再建が可能になる。

一方、増税、歳出削減はマイナスの政策である。

不安要素を打ち消すための政策と言えば聞こえはいいが、マイナスをゼロにする政策は、どれだけ成功してもゼロに戻るだけで、経済に与えるインパクトは小さい。

従って、経済学的にも、政治的にも、力強い成長戦略を訴えなければ、本当の意味での景気浮揚効果は得られないだろう。

その意味で、イタリアの政策は、成長戦略の重要性を認識している点で期待は持てるが、増税をした場合のマイナス効果は、思う以上のダメージをもたらす可能性がある。

日本も同様、財政再建や年金制度の維持ばかりに目が向いているが、そのために増税すれば、経済は大きなダメージを負う。ましてや、これという成長戦略を打ち出していない以上、せっかくの金融緩和の効果が一時的なものに終わってしまいかねない。

ユーロ圏は、財政再建をして後、成長戦略という絵を描いているように見える。

日本は、財政再建しか提示していないように見える。

そうではなく、「成長戦略をして後、財政再建」という順番で取り組むことが正しい解だ。至極単純な話だが、この考え方がなかなか常識にならない。そこに世界経済が低迷している原因がある。(村)

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