オバマ大統領が1月5日発表した、アジア重視の新国防戦略の中身がその後、徐々に明らかになってきた。

パネッタ国防長官が26日の記者会見で、「太平洋の海兵隊と陸軍の体制を維持する」と強調し、中国の海軍などの増強に対抗し、より多くの巡航ミサイルを搭載できる攻撃型潜水艦隊、ステルス性の新型長距離爆撃機、空母搭載の無人攻撃機などを強化する方針を示した。

一方で、イラク撤退やアフガニスタンからの段階的撤退に伴い、陸軍8万人と海兵隊2万人の計10万人の地上戦力を削減。これらによって国防費を今後5年間で約2600億ドル(約20兆円)減らす計画だ(10年間では、4500億~1兆ドルの削減)。

5日の新国防戦略の発表時点では、アジア太平洋への戦力の重点化をうたったものの、その具体像が見えていなかった。これでアジア重視が目に見える形になってきたわけだが、同時に、日本として何を為すべきか課題も明らかになってきた。

アメリカ軍制服組のトップであるデンプシー統合参謀本部議長は17日、アメリカ軍の新たな作戦指針を発表。これは、新国防戦略を作戦面で具体化したものだ。

中国が潜水艦や弾道ミサイルで米空母艦隊などが台湾海域などへ近づかないようにする「接近拒否」戦略に対する、作戦方針を明らかにしている。

ポイントは、▽いったん中国の対艦弾道ミサイルの射程外に退き、海空軍の長距離爆撃機などで中国軍の通信網などに打撃を与える。▽そのために、陸・海・空軍、宇宙軍、サイバー軍、米韓など同盟軍が臨機応変に編成を変えながら連携する(東日本大震災でのトモダチ作戦に近い)――などだ。

オバマ大統領は25日の一般教書演説では、中国や北朝鮮にからむ安全保障問題には触れず、核開発を進めるイランに対する抑止を優先する姿勢を示した。ただ、国防総省やアメリカ軍制服組のレベルでは、本気で「中国封じ込め作戦」の準備を進めている。

日本としては、集団的自衛権の容認、韓豪軍なども含めた連携強化、サイバー戦能力の飛躍的向上など、今すぐに手を着けなければならない。(織)

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2011年11月号記事 日本人のための戦略の格言「戦略にはドルマークが付いている」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2932