日米欧トリプル財政赤字は世界を滅ぼすか Part2

日米欧トリプル財政赤字は世界を滅ぼすか Part2

 

2012年1月号記事

 

日米欧トリプル財政赤字は世界を滅ぼすか Part2

 

財政危機が世界を覆っている。

国の借金が1000兆円を超える見通しとなった日本。

債務上限引き上げ問題で

何度もデフォルト(債務不履行)の危機に陥るアメリカ。

ギリシャを皮切りに南欧に広がるユーロ圏の債務危機。

気がつけば、日米欧が揃って

借金で首が回らなくなっているように見える。

このまま世界は、同時恐慌へと突入するのか。

それともじきに持ち直すのか。

悲観論・楽観論の代表的な識者の見解を紹介しつつ、

世界経済の行方を考えてみる。

(編集部 村上俊樹・山下格史)

 

本誌特集「日米欧トリプル財政赤字は世界を滅ぼすか」のPart2

 

 

 

 


 

 

なぜ日本は破綻しないのか

 

「すでに限界を超えている」

 今から16年前の1995年、「国の借金はどこまで増やせるか」と聞かれて、武村正義大蔵大臣(当時)は、こう答えた。

 当時の日本政府の抱える借金(公債残高)は、225兆円。巨額の借金とされた。

 そして今、国の借金は667兆円にまで積みあがった(一般政府総債務では1024兆円)。「限界」と言われた時から約3倍にも借金が膨らんだのだ。

 しかもその間、GDP(国内総生産)はほぼ横ばい。ところが、不思議なことに、日本政府は、いまだに破綻していない。

 財政赤字が深刻かどうかを考える上で、この事実は非常に重要だ。

 なぜ、世界一と言われるほどの巨額の借金を抱えながらも、日本は破綻しないのか。

 

 

超低金利自体が日本の強さを示している

 破綻とは、簡単に言って、資金繰りがつかなくなって、借金を返せなくなることである。仮に、借金を返すために借金をしなければいけなくなったとしても、借金が続く間は破綻しない。

 では、借金が続くかどうかは、どこで見分けるか。それは国債が発行し続けられるかどうかだ。国債を発行しても、みんなが買ってくれれば何の問題もない。しかし、誰も買わなくなると危なくなる。

 みんなが買ってくれれば、国債の価格が上がって、利回りは下がる。誰も買わなければ、国債の価格は下がって、利回りは上がる。

 従って、利回りが低いうちは、みんなが喜んで買っていることを意味するから、破綻の心配はないことになる。

 では、日本の国債の利回り(10年もの)はどうなっているかというと、現在、約1%という"超"低金利で安定している。

 ちなみに「ギリシャの次」と心配されているイタリアの国債は7%を超え、ギリシャに至っては20%を超えている(金利を20%以上つけないと、誰も買ってくれないという意味だ)。わずか1%でも買う人がいるのだから、いかに日本の国債が人気商品かが分かる。

 債券危機が世界中に広がることで、投資家たちは「リターン」よりも「安心」を求めている。日本国債が1%と世界一低金利なのは、世界一安心だと評価されていることを意味する。

 金利が急騰し始めているならともかく、上昇の兆しすら見せていない段階で、「破綻する」と騒ぐのは、気が早すぎると言えよう。

 

 

経常赤字の欧米の財政は深刻

 市場が日本の国債を評価するには理由がある。

 増田悦佐氏も主張しているように、日本は、政府部門が赤字で借金漬けであっても、民間を含めた国全体としては黒字であるからだ。しかも、政府の借金相手は、外国ではなく、国内の金融機関がメインだ。破綻のしようがない。

 1円も稼がない引退した老夫婦 (政府) が、息子夫婦 (国民)の稼いだ金を借りて使いまくっても、家計全体では黒字になっているのと構図が似ている。全体が黒字なら身内同士の貸し借りは問題ではない。

 しかし、国全体の収支を表す経常収支が赤字となると事情が違う。他国から金を借りて国内で使っていることになるからだ。これは本当の借金だ。アメリカ、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャ、みな経常赤字だ(日米欧トリプル財政赤字は世界を滅ぼすか Part1 P3のグラフ参照)。

 同じ財政赤字でも、経常収支が赤字と黒字とでは、まったく事情が異なるのだ。従って、欧米は破綻の恐れがあるが、日本にはないと言える。

 

 

経済成長で財政赤字を減らすべき

 もちろん、だからと言って、日本の財政は未来永劫安心だというわけではない。借金が膨らみ続ければ、国内でまかないきれなくなり、外国からお金を借りる必要が出てくる。ギリシャのように7割以上が外国からの借金ということになれば、どこかで破綻することになる。

 従って、財政赤字自体は、やはり減らすべきだ。そこで、改めて考えたいのは、「そもそも、なぜ国の借金は増えたのか」ということだ。

 

 

 

財政危機の本質は福祉国家の終焉を意味する

 この50年間で政府が何にお金を使ってきたのかを見てみよう。一般会計歳出の内訳の推移を見ると、比率が増えている項目はただ二つ。「国債費」と「社会保障関係費」だ(上の1番目のグラフ)。

 素直に見れば、社会保障を手厚くするために、借金を増やしてきたと解釈できる。

 従って、単純に考えれば、財政赤字を改善するには、社会保障を削ればいいという話だ。

 にもかかわらず、なぜか、借金を減らすために、公共事業や防衛関係費を減らせという声ばかり上がる。しかし、これらは借金増加とは無関係の項目だ。うがった見方をすれば、社会保障こそが財政危機の真因であるという事実から、目をそらさせようとしているかのようだ。

 深刻なのは、歳出項目として最も減っているのが、「文教及び科学振興費」「防衛関係費」など、国力の源泉となる部門であることだ。

 国力増強に向けた投資を減らした分を、社会保障などのバラマキに使えば、国全体は衰退するしかなくなる。

 この事情はアメリカを見ても同様だ。上の二番目のグラフを見れば分かるように、社会保障費の増え方は日本の比ではない。歳入のほとんどを社会保障と医療費で使ってしまっているのだ。これを経常赤字の状態でやるわけだから、国家は破綻に向かうはずである。

 ユーロ危機の震源となったギリシャも、歳出の44%を社会保障で、28%を公務員の人件費で使っていた。

 しかもギリシャの年金は現役時代の年収の9割以上を給付するという仕組みだった。日本の10分の1の人口なのに国会議員が300人もいて、公務員の数も勤め人の3人に1人。この大盤振る舞いを海外からの借金で賄っていたというのだから驚く。

 しかし、今回のギリシャ危機で明らかになったように、このような"福祉バブル"はもう破裂した。

 ギリシャはもちろん、イタリア、フランス、スペインなどではすでに、社会保障費削減の動きが始まっている。日本でも、年金支給開始年齢の引き上げが議論されるようになった。

 これからは、いかに社会保障費を削れるかが健全財政の指標になっていくだろう。

 その意味で、日米欧のトリプル財政危機は、世界の終わりなどではない。福祉国家への挑戦が終わりを告げたことを示しているのだ。

 

 


 

 

国が破綻するってどういうこと?

「国家破綻」ってよく言われるが、国が破綻したら、実際にはどうなるのだろうか?

 

1997年、IMFの緊急融資支援要請を決定したと発表する韓国の林昌烈副首相兼財政経済院長官(当時)APF=時事。

「破綻」という言葉には何か恐ろしい響きがある。

 仮に、日本政府が破綻した場合、政府機能は停止し、所有する国債はすべてパーとなり、倒産や失業が増え、国民は塗炭の苦しみを味わう──といったイメージを持ってはいないだろうか?

 しかし、通常、破綻しても、日本が消滅するわけではなく、そんなに悲惨なことにはならない。それに、実は「破綻」自体は珍しくない。

 例えば、1997年、お隣の韓国がアジア通貨危機をきっかけに破綻状態に追い込まれた。この時、資金繰りに詰まってしまった韓国は、IMF (国際通貨基金)に支援を要請。IMFはそれを受けて、韓国に210億ドルの融資を行った。

 その代わり、IMF主導で、財閥が解体され、規制緩和を行い、財政や金融の改革を行うことになった。

 韓国は2001年にIMFからの借金を完済。今ではサムスンなどの強い企業が生まれ、GDP (国内総生産)もかえって破綻時よりも増えている。

 また、2001年にはアルゼンチンがデフォルト (債務不履行)宣言をして破綻している。アルゼンチンも韓国と同様、IMFが介入し、220億ドルの融資を受けて、経済を立て直した。その結果、アルゼンチンも破綻前より経済が拡大している。

 つまり、破綻したからと言って、「この世の終わり」が来るわけではなく 、破綻を機に様々な改革を行って 、再生するケースが多い。

 

 

政府が破綻しても国民生活は破滅しない

破綻しても再生する!

最近の
よくある破綻のパターン

  • 政府の借金が積み上がって、何かの きっかけで、お金が返済できなくなる
  • 債務不履行(デフォルト)
  • IMF(国際通貨基金)や関係各国などが支援策を考える
     (一種の債権者会議のようなもの)
  • 支援の条件を決める
     ・ 返済条件の変更
      (債務の棒引き、返済時期の延期等)
     ・ 財政政策の変更
     ・ 金融政策の変更
     ・ 構造改革  等々
  • 支援の実施と借金の返済(財政再建)
  • 借金の返済とともに復活

借金の返済とともに復活

 実は日本も破綻したことがある。明治維新で幕府から新政府に政権が移った時や、太平洋戦争での敗戦で預金封鎖などを行った時がそうだ。これは、痛みの伴った破綻ではあったが、日本は消滅していない。

 破綻すると、政府に貸していたお金の何割かが返ってこなくなることはあるが、全くのゼロになることはほとんどない   (明治政府は幕府の借金を引き継いで返済している)。破綻を機に、その国の政府と国民が死滅するわけではないからだ。多少の混乱は起きるものの、国民の生活は続くし、経済活動も続く。ただ、借金を返せるサイズにまで棒引きしてもらうために、多少の痛みは伴う。

 しかし、大抵の場合は、それを機に復活する。日本も、韓国もアルゼンチンもそうなっている。政府が破綻して、政権交代したとしても、それはあくまでも、"政府"が潰れたという話であって、国民生活が破滅するわけではない。

 財務省は、政府の借金をわざわざ「国の借金」と言い換えて、意図的に危機感を煽っているから要注意だ。

 ちなみに、話題のギリシャも、実は過去、何度もデフォルト(債務不履行)に陥っているが、こちらは、うまく再生できていない。これまでの"破綻処理"が中途半端だったということだろう。

 いずれにせよ、破綻した方が結果的によくなることがあるわけで、あまり破綻をネガティブにとらえない方がいい。

 

 

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