2011年10月号記事

菅内閣が最後までこだわり続けた「脱原発」政策だが、徐々にその非現実ぶりが浸透し始めている。

時事通信が8月5~8日に行った世論調査によると、菅直人首相が主張する「脱原発依存社会」について、「納得できない」と答えた人が47・7%で、「納得できる」の40・2%を上回った。納得できない理由は、「電力供給に不安が残る」「再生可能エネルギーは未知の部分が多い」などが上位を占めた。

本誌が再三指摘してきたように、原発の停止は経済に相当大きなダメージを与えることになるし、再生可能エネルギーへの転換はすぐにできるものではない。現実解としては、原発の安全性を高めるしかないのは明らかだ。

内閣官房参与の前田匡史氏も、「(原発から)撤退すれば技術のレベルが下がり、古い原子力だけ残り一層危険になる。むしろ日本の技術力や安全運転能力を高める必要がある」と指摘する(8月16日付東京新聞)。

また、15日付のブルームバーグでは、「原子力発電の依存低減を目指す菅直人政権の方針は、日本経済にとって新たな『失われた10年』の始まりをもたらす恐れがある」と民主党政権の方針を批判。原発を停止すれば、現実問題として、原油の輸入を増やさざるを得なくなり、結果的に燃料コストをさらに増やすことになるという。