写真:Cap: viper-zero / Shutterstock.com

《本記事のポイント》

  • 迷走するイージス・アショアの代替策で、イージス艦を新造しても、国民を守れない
  • ミサイル防衛には「敵基地攻撃能力」が必須
  • 敵をなぎ倒す「現代の火縄銃」である電磁波兵器に予算を

自民党の国防議員連盟はこのほど会合を開き、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、「イージス艦」を新造する案を採用する方向で、23日にも提言をまとめ、今月内に政府に提出する方針だ。

防衛省は、ミサイル迎撃に特化した専用艦を含む護衛艦型や、民間船舶の活用型などを軸に検討してきた。しかし、それらの案は技術的な可能性が低いため、イージス艦の新造が有力案として浮上。ただ、イージス艦を造れば、海上自衛隊の人員不足問題がひっ迫する恐れがあり、これへの対応も合わせて必要となる。

イージス・アショアの迷走

イージス・アショアをめぐっては、発射されたミサイルを推進するブースターが、住宅地などに落下する可能性が浮上し、河野太郎防衛相(当時)が白紙撤回を表明。海上からミサイルを撃てば、住民の反対運動が起きない、という"政治的な判断"から、今回の案が検討される事態となった。

しかし、国民を核の脅威から守るより、ブースターの落下で人が死ぬかも分からない反対論が優先されること自体、合理的ではない。イージス・アショアを配備する自治体が、反対の声を上げる住民を説得できないなら、本来、政府はその自治体に地方交付税交付金などを投入すべきではないだろう。全国民に関わる国防問題に、一部の声が左右されることになれば、国を守ることなどできないからだ。

とはいえ、イージス・アショアがベストな選択肢であるとも言い難い。根本的な問題として、「既存のミサイル防衛の延長線上で、国民を守れるのか」という点が解決されないのだ。

たとえイージス艦を新造しても、例えば中国が日本を射程に収める極超音速滑空ミサイル「DF-17」を迎撃することは不可能である。さらに短・中距離ミサイルにしても、ほぼ100%の確率で仕掛けられるとみられる集中攻撃(飽和攻撃)の事態にも対処できない。

つまり、現在のミサイル防衛では、国民を守れないのは明らかなのだ。ミサイル防衛のあり方を根本的に見直すことが必要だ。

ミサイル防衛には敵基地攻撃能力が必須

ミサイル防衛のあり方については、すでに、さまざまな防衛関係者から提言されている。

まず見直すべきポイントは、歴代内閣が政策判断として持たないとしてきた「敵基地攻撃能力」を認めることだ。

多数のミサイルを全て撃ち落とせない以上、敵が撃つ兆候を見せた段階で、ミサイル基地を破壊し、被害を受けるリスクをできるだけ減らすことが必要である。敵基地攻撃能力は憲法上合憲ではあるものの、アメリカが攻撃する役割を担っていることから、認めてこなかった。

しかし、中国や北朝鮮のミサイルの脅威が急激に増していることに加え、アメリカからも同盟国の戦力強化を強く求めていることから、日本政府は敵基地攻撃能力を認めるよう勇断し、抑止力を大幅に向上させるべきである。

敵をなぎ倒す「現代の火縄銃」に予算を

さらにその上ですべきことは、ミサイルでミサイルを撃ち落とすという従来の常識から脱却し、「電磁波兵器」で撃ち落とすという、戦い方を一気に変えるゲームチェンジャーに予算を投入することだ。

マイクロ波を発射し、ミサイルなどを無力化する電磁波兵器は、1発当たりのコストもかなり低く、現状の限られた予算条件をクリアできる。戦国時代に置きかえれば、最強の武田騎馬隊をなぎ倒した火縄銃のような革新的な技術を、すでに日本は保有しており、政治の判断で早期に実用化できる。

国民が本当に知りたいのは、防衛装備を導入すれば、抑止力がどれほど高まり、命や財産を守れるのか、という点である。イージス・アショア問題は、日本が現実に迫る脅威を直視し、ミサイル防衛を根本的に見直す契機とすべきだ。

(山本慧)

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