2020年11月号記事

自粛要請には"抵抗"する権利がある!

忍び寄る不況。その原因は行政の「自粛要請」にある。

仕事を守り、雇用を守るために「抵抗」する人々の姿を追った。

(編集部 長華子、河本晴恵、竹内光風)


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9月。夏が過ぎ、久々に歩いた東京・銀座の街は静かだった。以前にぎわっていた通り沿いのカフェは閉店し、内装の解体が進んでいた。あちこちの店舗に「一身上の都合」で閉店したことを知らせる張り紙が張られていた。

世田谷の商店街にある居酒屋は、1カ月の休業後、売り上げが7割ほど減ったという。

「1日に5人くらいしか来ないから。もうやってられないよ。貯金を切り崩せば何とかなるけど、全然ダメだね。オイルショックの時は飲食店は繁盛していたけど、それよりひどい……」

4月に開店予定だった都内のラーメン屋は、オープンを9月に延期した。テナントオーナーが建物の休業を決めたためだ。

「休業中の従業員の社会保険料が重くのしかかりました。支払いを延長しても、来年2倍払うとなれば破綻してしまう」

売り上げの目途が立たなくても固定費は出ていく。蓄えを切り崩して払うしかなかった。

売り上げ、戻らず

「県をまたいだ不要不急の移動の自粛」が求められ、鉄道・航空などの交通インフラ企業、観光業は大きな打撃を受けた。

和洋菓子店や惣菜品販売店と取引する埼玉県の製菓材料店の売り上げは、4、5月に落ち込んだまま8月になっても回復しない。観光客の激減で土産物は売れず、冠婚葬祭も縮小して進物の需要も減る。「リーマンショックの時も東日本大震災の時も、こんな衝撃はありませんでした」。

自粛要請は、周辺のさまざまな企業の体力を吸い取っている。

緊急事態宣言は5月25日に全面解除され、営業時間の短縮やイベントの人数制限は緩和されつつある。ただ、感染拡大の状況次第では、再び自粛要請が出る可能性がある。「また自粛になったら、もたない」のが実情だ。

次ページからのポイント

これからどうなる日本経済? GDPの7割が危機に瀕する

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日本人には「抵抗権」がある