《本記事のポイント》

  • 新型コロナで米中開戦の兆しも!?
  • シュンペーターの弟子が研究した"戦争の経済学"
  • 平時は「分業」、有事は「生産力」が大事

米中関係がにわかにきな臭くなっている。

トランプ米大統領は、新型コロナウィルスが世界中に感染拡大した原因は「中国にある」と度々責任を追及している。6日には「我々が経験した中で最悪の攻撃だ。パールハーバー(真珠湾)や世界貿易センタービルよりひどい」と述べた。

どちらもその後、戦争に発展しているため、波紋を呼んでいる。同政権は中国に対してかねてより、関税の引き上げを含む「最大級の懲罰」を示唆している。

中国も反発を強めており、対立がエスカレートすれば、何らかの軍事衝突も十分に考えられる。

その舞台は東アジアになる可能性が高い。日本がどのようにその戦いにコミットするかは未知数な部分もある。しかし少なくとも、私たちを取り巻く経済状況が一変することは確かだ。「戦時の経済のあり方」について、考える時が来ている。

平時と有時で違う経済に対する考え方

「戦時の経済学」を研究した経済学者として有名なのが、一橋大学初代学長の中山伊知郎(なかやま・いちろう)だ。イノベーションの概念を最初に提唱したことで知られる経済学の大家ヨーゼフ・シュンペーターに師事し、ドイツのボン大学に留学。多くの理論経済学の著作を残した。しかし第二次大戦に身を置き、一般の経済学ではない「戦時の経済学」を研究する必要性を痛感し、『戦争経済の理論』を執筆した。

本書は主に戦争の当事者となった国を想定して論じられている。しかし今の日本に示唆的な考えを抽出すればこういうことになる。

「平時は"分業による自由貿易"が経済発展の基本となる。しかし戦時を想定すると"自前の生産力"がものをいうようになる」

つまり、平時に当てはまるオーソドックスな経済学から、発想を切り替えなければならないということだ。

経済はあくまで人が主役。政治的観点は欠かせない

経済学の主流の考えでは、マーケットを広げ、自由貿易圏を拡大することで、富は最大化される。各国が強みを生かし、高品質かつ低価格な製品をつくり、富を生み出す。その製品が自由に交換されれば、消費者も多くの恩恵を受ける。これが「国際分業」の考え方だ。

ところがそれは、平時において経済的利益を得るための考え方だ。中山は同書でこう語る。

「経済学が人間の学問であり、その人間がそもそも政治的だという意味で、経済学もまた政治的である」

確かに有事においては、"政治的理由"で貿易ルートが寸断される。また国民の安全や自国の存亡という"政治的事情"が優先される。

中山氏は、こうした政治的観点を踏まえると、経済の命題が「国境を超えた経済活動をいかに活性化させるか」から、「国内の生産力をいかに向上させるか」にシフトすると訴えているわけだ。

日本が先の大戦への突入を余儀なくされ、そして敗戦した原因も、この「生産力」にあった。ABCD包囲網が構築され、石油などの戦略資源が日本に入らなかったことが開戦につながり、日米の工業生産力の差が敗戦の理由になったと言われている。

日本は「自前の生産力」向上の道を目指せ

今の日本に置き換えればどうなるか。日本が米中衝突に軍事的に関与する、しないにかかわらず、多くの中国製品が輸入できなくなることが予想される。また、南シナ海や東シナ海が戦場となれば、これまで頼りにしていた資源確保のルートが絶たれることも想定される。

こうした事態に備えるためには、他国に進出していた多くの日本企業に、国内に回帰してもらう政策を取るべきだ。また生産力を下支えするエネルギーを確保するために、原発の再稼働などに取り組んでいかなくてはならないだろう。(竹内光風)

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