「日本的経営の祖」は、増税勢力と社会主義者と戦った

「日本的経営の祖」は、増税勢力と社会主義者と戦った

紡績のイメージ画像。

 

米大統領選をめぐる民主党のバーニー・サンダース上院議員の人気や、社会主義者を自称するサー・キア・スターマー英労働党党首の誕生など、社会主義勢力がにわかに台頭している。日本国内でも、それに同調するような言論が強まっている。

 

社会主義に対抗する有力な思想は、「自助努力の精神」だ。かつて、福祉国家路線で衰退したイギリスを復活させたのは、自助を基本とした国家の一大改革であったことは広く知られている。

 

個人と国家の尊厳をよみがえらせる自助努力の精神の重要性を再確認するために、2018年11月号「人材不況 - 「将の器」がGDPを再び伸ばす「人格経営」のすすめ Part 2」の本誌記事を再掲する(※内容や肩書きは当時のもの)。

 

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責任の器が広がれば経済は成長する

自分の責任ではない。あの人材で、あの環境では、仕方がなかった──。

 

「人のせい、環境のせい」にする無責任体質が日本全体に蔓延している。

 

また、歴代政権は選挙に勝つためにバラまきを続け、1000兆円を超える借金をつくり、財源がなくなると、増税の必要性を訴える。

 

財界を代表する日本経済団体連合会(経団連)は、本来であれば反対すべき立場であろうが、政府を刺激しないように、"忖度"し、増税に賛成している。

 

そのような「責任をもって行動しない姿勢」が、日本経済の低迷につながっている。

 

今のリーダーに必要なのは、「責任の範囲を広げる姿勢」だろう。かつてそれを実践し、「責任の男」と呼ぶべき人物がいた。鐘淵紡績(現・カネボウ)の社長を務めた武藤山治(1867~1934年)だ。武藤は鐘紡を戦前最大の紡績会社にした「中興の祖」として知られる。

 

福沢諭吉の直弟子だった武藤は、福沢が説いた「独立自尊」を一生涯貫き、社員を家族のように愛する経営を主導。「日本的経営の祖」と呼ばれている。ここでは、「責任の器」の広げ方が分かる3つのエピソードを紹介する。

 

 

奴隷工場を天国的な場所に

1つ目は、社員の幸福を考えて福利厚生を整え、奴隷工場を天国的な場所に変えたことだ。

 

武藤が入社した1894年、紡績工場は今でいう3K(きつい、危険、汚い)が当たり前だった。女性の工場労働者は奴隷同然に扱われていた。

 

労働者の生活を守るのが、経営者としての責務だ──。

 

武藤は、労働者の食事や宿舎を自らチェックし、学校や託児所、娯楽施設などを工場に併設。病災救済を目的とした共済組合も設置した。今では当たり前になっている提案制度や社内報も日本で初めて導入した。

 

武藤は奴隷工場を天国的な場所へ変え、「労働革命」を起こした。武藤が力を入れた「家族主義的経営」は、「社員を家族だと思い、親身に世話をしなければならない」という責任感の表れだったといえる。

 

兵庫県・旧武藤山治邸館長の米津寛司氏はこう指摘する。

 

「当時は『社員は徹底的に使うもの』という発想が常識でした。しかし、武藤は発想を転換し、社員に対する福利厚生を初めて行いました。『社員を大切にする』ことに目を向けた、優れた経営者だと思います」

 

 

「仕方がない」と戦う

2つ目は、独立自尊の精神に基づき、増税に反対し、減税運動を展開したことだ。

 

当時の政府は、営業税という国税を課していた。営業税は、すべての商工業者の売り上げに一律に課税され、中小企業にとって大きな負担だった。

 

これに対し、武藤は1919年、全国の中小企業を中心に、「大日本実業組合連合会」を組織。会長として営業税の全廃を求める運動を先導する。

 

財閥と政界が結託している「財閥政治」に対し、独立自尊の精神を持つ中小企業とともに、政界に新しい風を吹き込もうとした。

 

武藤は同連合会の総会で、「実業家が『金持ち喧嘩せず』という風で、政治を論議することを避けているべき時代ではないと私は考えます」と語っている。

 

武藤は、宗教家マルチン・ルターの「我はこの世に悪魔と戦うために来たれり」という言葉を好んだ。多くの経営者が諦めてしまう政治問題でも、武藤は責任を感じ、ルターのごとく行動した。

 

「増税は仕方がない」という空気が広がり、経団連も増税に賛成している現代とは対照的だ。

 

 

社会主義と戦う

旧武藤山治邸にある蔵書。その多くが洋書だ。

同邸の書斎の様子。

3つ目は、営業税全廃運動をキャンペーンで終わらせることなく、自ら政党を立ち上げ、政治を一新しようとしたことだ。

 

現在の日本では、社会主義化が進み、政府は「大きな政府」になりつつある。当時も似たような状況で、鉄道や郵便、簡保保険など国営企業が多かった。

 

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『人格力』で「共産主義は、愚痴と言い訳、嫉妬心の哲学」と問題視する(*)。

 

武藤も、「人のせい、環境のせい」にする社会主義を否定し、官に頼るのではなく、民間の力を活用する「小さな政府」を理想とした。事実、鐘紡の経営において、政府の補助金に一度も頼らなかった。

 

営業税全廃運動は1923年、「実業同志会」という政党の発足につながる。自ら党首を務めた武藤は「政官財の癒着根絶、鉄道省・郵便の民営化、総理大臣公選、産業振興」という政策を掲げ、24年の衆議院選挙で11人を当選させた。

 

武藤は鐘紡社長を務めながら、議員活動に尽力。不況下での緊縮政策に反対し、政界浄化を目指した。

 

前出の米津氏はこう語る。

 

「旧武藤山治邸の書斎には、彼の蔵書が約1600冊残っています。その半分が洋書です。尊敬していたナポレオンやリンカンの洋書を取り寄せ、戦略論や政治学を勉強していたようです。2人に共通するのは改革・革新ですから、シンパシーを感じていたのかもしれません」

 

武藤のように、組織のトップが責任の範囲を広げることができれば、日本経済をさらに上向かせることができるはずだ。

(*)社会主義が進んだ先に共産主義がある。
(参考書籍)『武藤山治の先見性と彼をめぐる群像』(武藤治太/文芸社)、『政に頼らず官に依らず』(澤野廣史/新潮社)、向学新聞電子版(国際留学生協会)。

 

【関連書籍】

『サミュエル・スマイルズ「現代的自助論」のヒント』

『サミュエル・スマイルズ「現代的自助論」のヒント』

大川隆法著 幸福の科学出版

 

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タグ: 増税  減税  社会主義  自助努力の精神  責任  経団連  労働革命  武藤山治  鐘紡  

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