HSU 未来産業学部プロフェッサー

志波 光晴

プロフィール

(しわ・みつはる)1957年、福岡県生まれ。神奈川大学経済学部経済学科卒業後、プラントメンテナンス会社、非破壊検査装置会社で働く中で理科系の研究者を決意。放送大学教養学部で理科系を学び、東京大学先端科学技術研究センター研究生を経て、同大学工学部より工学博士を取得。同大学先端科学技術研究センター助手、(財)発電設備技術検査協会鶴見試験研究センター研究員、(独)物質・材料研究機構上席研究員を経て、2016年よりHSU未来産業学部プロフェッサー。専門は、材料工学、非破壊検査、信頼性評価。著書に「環境・エネルギー材料ハンドブック」(オーム社)など。

この連載を読んでくださっている読者の方から、「錬金術は今日において本当にできるのか? できるとしたらどうすればよいのか?」という質問を受けました。

実は、その答えは連載の結論まで取っておこうと考えていたのですが、読者の本音は「早く結論を言ってほしい」ということのようです。今回はその疑問にお答えしたいと思います。

錬金術は、現在の科学では否定されており、迷信の一つとするのが主流の考えです。現在の科学では、目で見ることができないもの、実際にやって見せることができないもの、誰がしても同じようにできないものは、「実証できないため、実体として存在しない」とする、唯物論を基にした客観主義の考え方を取っています。

この考え方は、実用的には大変有効でした。産業革命以降の科学技術の進歩に大いに貢献し、民主主義における平等思想の広がりと相まって、社会の主流となりました。

「唯物的客観主義」の考え方は、学校教育を通じて、私たちの「常識」として刷り込まれています。理系の研究者としてのキャリアを持つ私自身、錬金術を探求するにあたり、自らこの洗脳を解くところから始めなければなりませんでした。

「錬金術は本当にできるのか」という質問に答えることは、とても大切だと思うので、私自身がこの問題をどのように考えてきたかという原点を振り返って、整理してみます。