戦略原子力潜水艦のミサイル発射筒が開くイメージ。

《本記事のポイント》

  • 米政府、潜水艦発射型の「小型核弾頭」を実戦配備
  • 小型の核弾頭は、広島の原爆より小さく、ピンポイント攻撃に使用できる
  • アメリカの防衛力に加え、同盟国への「核の傘」が強化される

米国防総省は4日、ミサイル防衛能力を高める中国やロシアに対抗するため、潜水艦発射型の「小型核弾頭」を実戦配備したことを発表した。

それについて多くのマスコミは、潜水艦発射型のミサイルは、敵のミサイル防衛システムを突破しやすく、アメリカの抑止力が強化される点を報じている。アメリカ政府としては、中国やロシアに対する核の均衡を維持することが狙いだ。

アメリカはもともと小型核弾頭を保有

では、配備された小型の核弾頭は、どの程度の威力があるのか。

例えば、米戦略原子力潜水艦「テネシー」は、90キロトンと455キロトンの核弾頭を搭載できる。ミサイル1基当たり、最大8発の弾頭を搭載可能だ。

米科学者連盟によると、今回配備されたのは、5キロトン規模の威力があるという。かつて広島に投下された原爆は10~20キロトンであり、それより小さい規模となる。つまり、一つの小さな都市を破壊できるレベルと言える。

すでに、米戦略爆撃機B52の巡航ミサイルなどには、小型の核弾頭を搭載できる状態だった。だが、中国やロシアの防空システムを突破できない可能性が浮上したために、「潜水艦にも配備すべき」という声が高まっていた。

つまり、アメリカはもともと持っていたものを潜水艦にも配備できるようにしたのであり、国家の意思を大幅に見直したわけではない。実際に米空軍は、朝鮮半島上空に核を搭載できるB52を頻繁に飛行させ、北朝鮮をけん制してきた。

使えない核兵器を「使える」ものに

これまで核兵器は、「被害が大きすぎて使えない」と評されてきた。そのため核を持っていても、「実際には十分な抑止力として機能していない」という見方があった。

ところが、その威力を抑えることで、実戦で「使える核兵器」になったのであれば話は別だ。アメリカに対抗している国には脅威となる。

特に、アメリカとの戦争を辞さないという北朝鮮やイランにとっては、脅威に映るだろう。小型核兵器であれば、核関連施設をピンポイントに攻撃する、いわゆる「外科手術的攻撃」が可能となるためだ。

トランプ米政権は、同盟国に防衛費の負担増を求める一方で、このような核の近代化を進め、同盟国に対する「核の傘」を強化している。これは、中国などと軍事的な緊張関係のある日本としては歓迎すべき動きではないか。

(山本慧)

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