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《本記事のポイント》

  • 米国防総省が、バグダディ容疑者の潜伏施設を完全に破壊した映像を公開
  • トランプ大統領は、容疑者の殺害で公約を達成。来年の大統領選に弾み
  • イスラム国の次にイランに向かうアメリカ

米国防総省は10月30日(現地時間)、イスラム国(IS)のバグダディ容疑者の潜伏施設を完全破壊し、その映像と写真を公開した。26日に行われた急襲作戦の一端を垣間見ることができる。

容疑者が潜伏していた施設は、シリア北西部のイドリブ県で、シリアに駐屯する米軍の基地からヘリコプターで1時間の距離にあったという。2人の子供とともに自爆ベストで亡くなった容疑者の最期を映像で見届けたトランプ大統領は、「まるで映画のようだった」と述べている。

公開された映像には、米特殊作戦部隊の兵士と軍用犬が施設に接近する様子や、子供や捕虜らを退去させた後に、精密誘導ミサイルで施設を破壊し、更地になった場面が映されている。

マッケンジー中央軍司令官は記者会見で、「宗教的な施設や記念施設として残らないように破壊した」と説明した。また、容疑者を追い詰めた軍用犬「コナン」の活躍にも触れた。コナンは、これまで15回も戦闘に参加した経験のあるベテランである。

保守系だけでなく、リベラル系メディアも賞賛

容疑者の殺害により、イスラム国が壊滅したわけではない。それでも今回の作戦については、保守系だけでなく、リベラル系のメディアも総じて賞賛している。

反トランプ急先鋒のCNNキャスターのジェイク・タッパー氏ですら、こう述べている。

「記者会見でトランプ大統領が、イスラム国によって残酷に殺害されたアメリカ人やイギリス人の名前をあげて改めて弔意を表したのは、ここにいる誰もが拍手を送るだろう」

来年の大統領選を前に、トランプ大統領ではなく、民主党の大統領候補ジョー・バイデン氏がアメリカのトップだったらどうなっているか。早速こんな議論も飛び出している。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領のスピーチライターを務めたマーク・ティッセン氏は、フォックス・ニュースでこうで揶揄した。

「(アルカイダの首領)オサマ・ビンラディンに対する急襲に反対していたジョー・バイデンだったら、バグダディはまだ生きていただろう」

失敗すれば、米軍側に犠牲者が出るリスクを取り、急襲作戦を実行したトランプ大統領。最高指揮官としてリーダーシップを示したことは大きな功績だ。

支持率が上昇し、大統領選へ弾み

「イスラム国の撲滅」は、トランプ大統領が2016年の大統領選で国民に誓った公約だった。

清教徒たちの入植から始まったアメリカは、「宗教国家」の精神が根付いている。それは「正義のための戦いは善」であるとの価値観に基づいて、神との契約を守ろうとする精神だ。そのため、どんな犠牲を払ってでも悪と戦うという「メシアニズム」から「世界の警察官」としての使命を果たす傾向がある。

カメラの前でアメリカ人を斬首したり、少数民族を奴隷化したりするイスラム国の撲滅は、アメリカ国民の安全を守るために遂行しなければならない任務の一つだった。

サウジアラビアで2017年、「イスラム国は、宗教文明の激突というよりも、善悪の問題です」と語ったトランプ大統領にとって、「悪との戦い」そのものとなった。

本来、彼らが信じるアッラーは、テロ活動を許さないだろう。大川隆法・幸福の科学総裁は、2016年の御生誕祭の講演「地球を救う光」の中でこう述べている。

イスラム教では、アッラーは『慈悲あまねき神』といわれています。『慈悲の神』なのです。それは、かつてネパールに生まれ、インドで活躍した仏陀が説いた『慈悲』と同じものなのです。 〈中略〉 それは、当然、その教えを広げることを目的としているでしょうが、それを広げる過程において、罪もない人々を苦しみや嘆きのなかに置くことを予定しているわけではありません

今回の作戦は、米軍が2003年に、サダム・フセイン元イラク大統領の隠れ家の地下に隠れているところを確保したブッシュ大統領や、11年にパキスタンにあるビンラディン氏の隠れ家を急襲して殺害したオバマ大統領の功績に相当する。

両者とも、その直後に世論調査の支持率が上がっていることから、トランプ氏の大統領選に向けた取り組みに弾みがつくのは間違いないだろう。

イスラム国の次はイランか

イスラム国を片づけた後、アメリカはイランに集中するのではないかという予測も出ている。

しかし、テロリストと一般的なイスラム教徒は異なるため、区別が必要だ。イランについては、人権意識が希薄である点の改革は必要であっても、国際社会は、同国を北朝鮮と同じ"専制国家"と位置づけるのは行き過ぎだ。イランに最大限の制裁を続ければ、同国が暴発して「第三次世界大戦」を誘発しかねない。

ユダヤ・キリスト教とイスラム教国家の対立を止めるには、両宗教の神が同じであることを伝え、宗教的な仲裁を行うことが求められている。肌の色、民族の違い、文化的な違いがあれども、共に神に愛されているのが真実だ。互いに理解し合えるよう、共通基盤を提供し、導いていく使命が日本にはある。

(長華子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『地球を救う正義とは何か』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1762

幸福の科学出版 『イランの反論 ロウハニ大統領・ハメネイ師 守護霊、ホメイニ師の霊言』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=2266

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