27日付産経新聞は、高さ10メートルの防潮堤が整備されていた岩手県宮古市田老地区で、「防潮堤があるから大丈夫」と思っていたばかりに今回の津波の犠牲になった人が少なくないと伝えている。

同地区は1896年の津波で1859人、1933年の津波では911人の死者・行方不明者が出た。このため1934年に防潮堤の工事を始め、最終的に1978年に完成。海側と陸側の二重構造で、高さ10メートル、総延長約2.4キロの国内屈指の防潮堤を有していた。

だが東日本大震災では、高さ20メートル以上の津波が次々と押し寄せ、海側の防潮堤500メートルが崩壊。同地区の死者・行方不明者は数百人に上ると見られている。今回の地震で同地区のある高齢者は、息子夫婦から避難するよう言われても「防潮堤があるから逃げなくても大丈夫だ」と応じず、その直後に自宅もろとも津波で流され、1週間後に遺体で見つかったという。

今回の教訓を踏まえ、被災地に新設する防潮堤は高さ20メートルの津波を防げるものとすべきだが、20メートルなら絶対安心というわけではない。自然の猛威が人間の経験範囲の想定を超える可能性は常にある。かといって、「いくら高くしても無駄」という投げやりな姿勢でいいはずもない。できる限りの対策をとりつつ、それに慢心しない謙虚さや危機意識も忘れないというのが、天災に対する心構えとして重要だということだろう。(司)

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