中東和平構想を売り込むトランプ大統領 アメリカの「平和構想」は失敗を運命づけられている?

中東和平構想を売り込むトランプ大統領 アメリカの「平和構想」は失敗を運命づけられている?

 

《本記事のポイント》

  • 中東和平の第一弾の経済面での支援に反発するパレスチナ人
  • イスラエルの領土拡大を狙うネタニヤフ首相
  • 二流市民として扱われるパレスチナ人は、政治的自由を求めている

 

イランによるウランの濃縮や貯蔵量に衆目が集まっている。一方、イラン問題とセットで考えなければならない問題がある。イスラエルとパレスチナの「中東和平」問題だ。

 

トランプ米大統領はこれを「世紀のディール」と呼んで成功させる意気込みだが、上手くいく見通しはあるのか。

 

 

パレスチナ人はクシュナー肝入りの中東和平案に反発

トランプ氏の娘婿であるジャレッド・クシュナー米大統領上級顧問は6月、「繁栄に向けた平和構想」の第一弾として「今後10年間にわたり経済支援で500億ドル(約5.4兆円)を注ぎ込む」と発表した。しかしパレスチナ自治政府と、パレスチナのガザ地区を実行支配するイスラム組織ハマスは、それを一蹴。パレスチナでは、この支援が発表される前に、「パレスチナは買収されない」などと抗議の声を上げるデモが起きた。

 

トランプ政権の「平和構想」はなぜそれほど受けが悪いのか。

 

現にパレスチナがひっ迫した経済状況にあることは、誰も否定できない。100万人を超える難民がおり、25万人は最低限の食料さえ手に入れることができない状況だ。

 

 

2国家共存は念頭にない「拡張主義」のネタニヤフ首相

しかし、だからといって「札束」だけでは、和平につながりはしないだろう。

 

そもそも多くのパレスチナ人は、なりたくて難民になったわけではない。「ユダヤ人はイスラエルに戻るべきだ」というシオニズム運動が盛んになり、1948年、ユダヤ人はイスラエルに国を建てた。それによって、今度はパレスチナ人が家を追われたのだ。

 

1948年の第一次中東戦争をイスラエルは「独立戦争」と呼ぶ。一方、パレスチナ人は「大惨事」と呼び、これを批判する。つまりイスラエル建国そのものに非道さがある。

 

ガザ地区はイスラエルが建設した壁と軍隊に封鎖されている。そこに住む180万人は「空の見える」牢屋に閉じ込められているようなものだ。

 

その後の和平交渉も一進一退だ。

 

1993年、ノルウェーの尽力と仲裁のもと、アラブ人がつくるパレスチナ解放機構(PLO)とイスラエルとの間で、「イスラエルは占領しているヨルダン川西岸地区とガザ地区から撤退し、パレスチナの自治を認める」という取り決めがなされた。

 

ガザ地区はパレスチナ自治政府のものとなった。しかし今もまだヨルダン川西岸地区に40万人のユダヤ人が入植している。このまま入植が広がれば、将来のパレスチナ国家の独立を見据えた93年のオスロ合意で確定した方針である「2国家共存」が不可能になる。

 

イスラエルのネタニヤフ首相は入植地併合方針を示していることから、パレスチナ人国家をつくり、イスラエルと平和的な共存を目指す「2国家共存」を実現する気など毛頭ないことは明らかだ。最終的に入植したすべての自治区をイスラエルのものにしてしまえば、イスラエルは「拡大」できる。

 

 

アパルトヘイトよりひどいイスラエル

イスラエルの「闇」について、著作『イスラエル・ロビー』で2007年から暴露し続けている国際政治学者がいる。リアリズムの国際政治学者のジョン・J・ミアシャイマー氏だ。彼は、同著発刊から10年を振り返り、講演でこう述べている。

 

「アメリカはイスラエルを支持してきましたが、イスラエルは民主主義国家とは言えません。なぜならイスラエルはユダヤ国家で、ユダヤ教徒以外は二流市民として扱うからです。アメリカでは、すべての信仰者の法の下の平等が保障されているのと対照的です」

 

「リチャード・フォーク氏およびバージニア・ティリー氏による国連の研究によると、イスラエルはアパルトヘイト国家となっている。南アフリカの著名な法律の大学教授のジョン・ダガード氏は、パレスチナ人に対して行われているイスラエルによる犯罪行為は、南アフリカで行われていたアパルトヘイトよりも非常に悪いものだと言われています」

 

ガザ地区の若者の失業率は約7割に及ぶ。180万人の住民は分離壁のなかに押し込められ、停電は一日に13時間。2020年にはガザは人が住める場所ではなくなると、国連は警告を出している。

 

 

政治的自由を求める気持ちは根源的なもの

こういう状況だから、クシュナー氏は、第一弾の経済面での支援は歓迎されると思ったのかもしれない。しかしパレスチナの人々は、経済的な支援が必要ではあるが、秋に発表される第2弾の政治的なプランが先で、「自分たちの国の未来は自分たちでつくりたい」と訴えている。

 

それは人間が求める根源的な自由の一つであり、今、香港市民が中国に対して要求しているものだ。

 

イスラエルは民主国家だから価値観を共有する──。そんな言説も多いが、そろそろ目を覚まさなければならない。

 

アメリカは、ヨルダン川西岸の入植地を併合するというネタニヤフ首相の方針を一定の条件のもとに容認する構えだ。しかしそうすれば、将来の侵略の抑止のための「イスラエル解体」を掲げるイランに正当性を与えることになる。それはアメリカの国益にもならないはずだ。

 

中東和平は、イスラエルが「拡張主義をやめる」ことで実現に近づく。イランもイスラエルの脅威から守るために核武装をする必要性はなくなる。このためアメリカはイスラエルの方針を容認するのではなく、「オスロ合意を遵守し、入植地から撤退しなければ、毎年アメリカがイスラエルに無償援助で与えている軍事援助を減額する」、「イスラエルの保有する核に国際的な査察を受け入れさせる」といった政策をイスラエルに伝えることで、将来の紛争を抑止するべきだ。

 

日本は、1993年のオスロ合意後、ガザ地区の下水道施設の整備やヨルダン川西岸のエリコでの病院建設など、パレスチナ人の環境・生活状態の改善のために協力をしてきた。

 

イスラエル・ロビーのような存在のない日本は、イスラエルの肩を持つ必要はない。むしろ率先して、新たな占領地への入植の阻止や核軍縮をイスラエルに求めるなど、国際世論づくりに貢献すべきだろう。

(長華子)

 

【関連書籍】

幸福の科学出版 『リーダー国家 日本の針路』 大川隆法著

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タグ: 中東和平  アメリカ  パレスチナ  イラン  難民  イスラエル  ガザ地区  核軍縮  

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