東日本大震災の政治・経済的影響について、MIT国際問題研究所上級研究員のロバート・マドセン、同研究所ディレクターのリチャード・サミュエル両氏が米国際問題専門誌フォーリン・ポリシー(電子版)に寄稿しているので内容を紹介する。

・政治的には、失政が続いた民主党政権にとって汚名返上のチャンスとなる。今回の対応を評価するのは尚早だが、これまでのところ村山政権の阪神大震災への対応に比べれば評価できる。与野党の協調を考えれば、政権基盤を立て直すための数カ月を稼げるかもしれないが、それは原発問題の先行き次第ではある。

・国内経済では短期的に国内生産は下火になり、GDPの押し下げ効果は否めない他、円高が海外資産を国内生産の回復に充てようとする企業を苦しめるだろう。しかし中長期的には、阪神大震災後のような復興による経済効果が望めるかもしれない。とはいえ今回の震災で、政権が構想していた増税などによる財政再建は遅れることになるだろう。

・世界経済への影響では、全体の需要を押下げることでインフレの緩和になるかもしれない。一方では復興時に工業原料等への需要の集中が予想されるため、長い目で見ればインフレ圧力は強まる。特に問題なのは原油価格のさらなる上昇で、日本や世界の原子力発電が縮小の動きになれば、それに代わって石油の需要が高まる可能性がある。

・地政学的には、日米同盟の結束は強まるだろう。災害救助に取り組んでいる自衛隊や在日米軍に対する好意的な理解も進むものと思われる。一方で、日本や世界が原子力発電から遠ざかる流れになれば、イランを含めた中東産油国の地位を高めることになりかねない。

地震の広範な影響がよくまとめられている記事だが、災害対応にかこつけた政治パフォーマンスが菅政権の浮力となるかは疑問である点と、財政再建については経済成長が優先されるべき日本経済の実情において、増税論が立ち消えになるとしたらむしろ好ましいことであるという点を指摘しておきたい。震災によって政策面で明らかになったことについては、防災費用も削ってしまった「コンクリートから人へ」政策(公共投資削減)を見直すとともに、災害対処・国防において国としての対応力を弱める地域主権改革についても取りやめるべきである。

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