中国とAI、二つの「独裁」 ―新しい「人間の定義」で乗り越える - 編集長コラム

中国とAI、二つの「独裁」 ―新しい「人間の定義」で乗り越える - 編集長コラム

IA関連のイベントで話す中国ネット検索大手「百度(バイドゥ)」のCEO李彦宏(ロビン・リー)氏。中国のIT企業は政府の監視システムの一翼を担っている。写真:AP/アフロ。

 

2019年5月号記事

 

編集長コラム Monthly  Column

 

中国とAI、二つの「独裁」

―─新しい「人間の定義」で乗り越える

 

 アメリカと中国の「冷戦」が本格化し、世界は米ソ時代のように二分されようとしている。

 今、中国は先端技術を他国から奪って稼ぐ「山賊経済学」、ゆくゆくは軍事力で他国の資源を強奪してお金に換える「軍事経済学」で、アメリカから世界の覇権をかすめ取ろうとしている。

 それは、マルクス主義が世界を覆うことを意味する。中国は資本主義のふりをしながら、完璧な監視社会の構築をめざし、盗聴や顔認証、電子決済などで共産党が国民のすべてを把握しようとしている。まさにジョージ・オーウェルの『1984年』の世界で、国民は動物園の檻の中に入れられている状態だ。中国の世界覇権は、これが世界に広がることを意味する。

 唯物論のマルクス主義が勝利してしまうのだろうか。あらゆる宗教を弾圧し、唯物論的な教えと活動に変える中国に、キリスト教も仏教もイスラム教も対抗できていない。

 

 

人間がAIの奴隷に?

 中国の監視社会は、最先端IT企業やAI(人工知能)によって完成されようとしている。

 アメリカの巨大IT企業のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)も利用者を囲い込み、個人情報を集め、丸裸にしてモノを売るビジネスで、中国のような「独裁」の一歩手前にある。

 GAFAもAIも過去の大量のデータを蓄積し、統計学的に利用者が「欲しい」と思うような情報やモノ、サービスを薦める。それは、何千万人、何億人という人々のデータの中から「平均的な答え」を出すにすぎない。GAFAの「薦め」に従い続ければ、人間は「平凡化」する。

 それがさらに進めば、GAFAやAIが「独裁者」や神のような存在になる。人間はその指示の下で奴隷のようになって、仕事をしたり人生の選択をしたりする時代になる。

 AI時代のリスクに警鐘を鳴らす人は多いが、例えばテスラ・モーターズのCEOイーロン・マスク氏は、「私たちはAIを使うことで、悪魔を呼び出している」と語った。21世紀以降は、唯物論が勝利し、人間が動物になる時代なのか。また、人間がAIの奴隷になる時代なのか。

 

 

近代の唯物論的人間観

「人間が動物や奴隷でいいのか」と聞かれると、誰もが「そうではない」と答えるはずだ。「人間はそもそもどういう存在なのか」という「人間の定義」からやり直す必要がある。

 近代以降の人間観は、基本的に唯物論的なものだった。カントら啓蒙思想家が、学問をキリスト教会から切り離し、「宗教からの離脱」を図った。その結果、近代科学が発達し、近代文明が発展した。

 政治については、神の導きではなく、議会内の人間同士の議論から神の考えを推しはかる「神のいる民主主義」が近代イギリスで始まり、アメリカなどにも受け継がれた。しかし一方で、神が切り離され、唯物論のマルクス主義の流れも生み出された。

 経済の分野でもマルクス主義の人間機械論の影響は今も大きい。スタンダードな経済学でも、単なる利害で動く平均的な「経済人」を想定し、人間をロボットのように扱う。

 国際政治では、権謀術数を駆使して国家のサバイバルを目指すマキャベリ的な考え方(リアリズム)の影響が大きい。民主国家が集まり、国際機関をつくれば平和になるというカント的な考え方(リベラリズム)もあるが、どちらもうまく機能していない。

 これら近代啓蒙思想に加え、現代ではハイデガーら実存主義哲学も意外に人々に影響を及ぼしている。「偶然にこの世に投げ出され、何をどうしていいか分からず、不安の中を手探りで生きている」という思想で、あまり救いが感じられない。

 いずれも根底に、人間を神やあの世から切り離し、人間が霊的存在であることを否定的に見る人間観がある。そのため人間をごく弱い存在、平凡な存在と位置づける。近現代の「人間の定義」そのものに、動物化・奴隷化に傾く要素があったと言える。

 

 

人間は魂修行する存在

 幸福の科学の大川隆法総裁は、これからの時代の「人間の定義」についてこう語っている。

『人間の定義』は、これからますます難しくなっていくと思います。

 その意味で、やはり、勇気を持って、『人間とは、魂と肉体が合体した存在として、この世で、人生修行を送っているものである。前世から、この世に生まれてきて魂が宿り、人生修行をして、あの世に還るものである』と定義することが必要になると思います」(『「人間学概論」講義』より)

 ここで言う人生修行というのは、「あの世があって、人間の本質は魂、霊的存在である。人間はあの世から地上に生まれて来て、魂修行をしている。その過程で人に愛を与えたり、この世をより素晴らしい世界にする(地上ユートピアを創る)ことを求められている」というものだ。

 これは、仏陀が説いていた転生輪廻や布施の精神、衆生救済の教えに近い。イエス・キリストの教えもそう遠いものではない。霊肉に関する教えや、隣人愛、プロテスタントで強く出てきた繁栄思想に対応する。

 イスラム教とも一致する部分はある。イスラムのたくさんの戒律は天国に還るためのもの。貧しい人に分け与える喜捨の教えや、イスラムの共同体を拡大・防衛するジハードの教えもユートピア思想として重要だ。

 人間を「魂修行をしている存在」と定義することは、いつの時代も神仏の側は人間社会から「離脱」などしておらず、人類を愛し、導き続けていることを明確にしている。

 この定義の下なら、近代の「宗教からの離脱」を乗り越え、人間の動物化・奴隷化の流れを止められるのではないだろうか。

 未来学者のアルビン・トフラーは著書『富の未来』で、これからの時代は「文化、宗教、倫理などが舞台の中心に戻ってくる」と指摘した。まさにそれが始まっている。

 

「人間は魂修行をしている存在」という定義は、世界の宗教の共通の土台になり得る。写真:Benny Mar ty / Shutterstock.com

 

 

人間は未来を変えられる

 ここで言いたいのは、「みな幸福の科学の教えを信じろ」ということではない。これぐらいの「人間の定義」が、これからの学問や社会のあり方の基礎になるのではないかという提案だ。今号の特集で平成の30年間は停滞の時代だったと指摘したが、その中で幸福の科学は成長し続けている。その提案には耳を傾けてしかるべきだろう。

 大川総裁の2900回以上の説法(書籍2500書以上、公開霊言シリーズ500書以上)は、この人間の定義の支えとなる。

「経営の神様」の松下幸之助氏は生前、「新しい人間観」を唱えた。「人間は天命に従うことで万物を支配する力を持つ。天命にもとづいて善悪を判断し、衆知を集めれば、理想的な社会を実現できる」と説いた。

「魂修行の過程で与える愛に生き、地上ユートピアを創る」という人間の定義は、人間が弱々しく、平凡な存在などではなく、未来を変えられる力強い存在であることを意味する。幸福の科学では、この「人間の定義」の上に学問を再構築しようとしている。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)を開学し、人間幸福学を中心に、未来創造学、経営成功学、未来産業学を立ち上げたのもその一環だ。

 この中で例えば経済学の領域では、平均的な「経済人」を多様性のある「神仏の子」に置き換え、「悟りを求め、愛を与え、地上ユートピアを創る喜び」が経済的な価値を持つとする「理念経済学」をつくり上げようとしている。

 

 

天上界の智慧を富に

 踏みこんで言えば、これらの学問の核心は、神仏の智慧をもとに今までにないものを生み出し、未来を創り出すことにある。

 多くの現代人にはにわかに信じられないかもしれないが、神仏は地上の人たちがもっと豊かになることを願い、導いている。西洋では、繁栄の神ヘルメスがいるが、世界中を富ませようと駆け巡っているからこそ、近現代の欧米の興隆があった。

 神仏は常に人間に対し、「こうすれば繁栄し、幸福になる」という価値判断を降ろし、それにもとづく「未来の設計図」を示そうとしている。天上界からの導き、インスピレーションから新しいものを創りだし、富に変えるのが、これからの時代の学問であり、経済や政治のあり方だと言っていいだろう。

 日本の繁栄に責任を負い続けている日本神道の主宰神・天照大神は霊言の中で、IT技術やAIが発達する時代の生き方について語った。

人間が人間として、この世に生まれ、生き、死んでいく理由は、『この世に生きている間に、何らかの新しい価値を創造した』ということにあります。

 (中略)機械にはできない仕事に対して挑戦し、人間として、新しい価値を生み出すことを生業とする人々が増えていくことを、心の底より望みます」(大川隆法著『天照大神の神示 この国のあるべき姿』より)

 神秘の世界には神仏の智慧という無限の「資源」が眠っている。それを富に変えられる人は、神仏と同じような「創造する力」を持つ。その仕事ができる宗教家、政治家、クリエーター、企業家、発明家などを育てるための学問が構築されようとしている。

 

 

中国の「軍事経済学」に勝つ

 振り返れば共産主義国家のソ連は二流の武器を除き「何も生み出さなかった」と言われる。ボリショイ・バレエなどの芸術もロマノフ朝時代のもので、ソ連は遺産を食い潰すだけだった。

 GAFAやAIの仕組みは、地上にある大量の情報をインプットして統計処理したものなので、神仏の智慧という無限の「資源」を生かせるわけではない。AIが神仏の願いを受け止め、「それを実現したい」という意志や夢、情熱を持つことはできない。

 これまでも世界規模の繁栄は、天上界からの導きやインスピレーションから始まった。20世紀アメリカの繁栄の源流の一人、発明王エジソンは魂の不滅を信じ、神的存在が自身に1100近い発明のアイデアを降ろしたと信じていた。当時、アメリカで電機のほか鉄鋼、自動車などの基幹産業が生まれた。そのときから何十倍も豊かになった現代は、エジソンをはるかに超える未来産業を生み出していけるのは当然のことだろう。

 それで初めて、他国からただ奪ってくるだけの中国の「山賊経済学」「軍事経済学」に勝つことができる。

 

日本人初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、老荘思想から独自の素粒子論の発想を得た。発明王エジソンは、何らかの神的存在からのインスピレーションによって数多くの発明をしたと信じていた。写真:Science Photo Library/アフロ

 

 

AIを魂修行のために

 IT技術もAIも重要ではあるが、それをどう使うかの倫理や方向性が要る。新しい「人間の定義」にもとづいて、地上の魂修行をより充実したものにするために、これらの科学技術は使われるべきだろう。

 例えば、幸福の科学にこれまで神仏が降ろした未来産業についての智慧や「設計図」は以下のようなものだ。

 (1)交通革命やロボットによる移動や生活の時間短縮によって、より濃密な魂修行ができるようになる。(2)宇宙開発、海洋開発、地下開発などによって、人類の活動領域のフロンティアを開く。(3)食糧革命、エネルギー革命によって、人口100億人が共存して魂修行できるようになる。

 GAFAやAIの技術そのものに価値があるわけではなく、今までにない魂修行の環境をつくり出すことが重要だ。IT技術やAIを「独裁者」を生み出すために使うのではなく、神仏の人類への愛のために使うということでもある。

 人類を導き続ける神仏の愛や慈悲を受け止める大量の人材が求められている。その人たちが「宗教から離脱」した近現代を終わらせ、中国やGAFAをはるかに超える新文明の繁栄を創り出すだろう。

 前出のトフラーは、21世紀に生きる世代は「新たな文明の設計に直接、間接に参加している」と語った。時代はまさにこの方向に動いている。

(綾織次郎)

 

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