香港の社会問題に切り込んだ衝撃作「誰がための日々」ウォン・ジョン監督インタビュー(後編)

香港の社会問題に切り込んだ衝撃作「誰がための日々」ウォン・ジョン監督インタビュー(後編)

©Mad World Limited 

 

1997年にイギリスから返還されて以降、経済発展を続けながら、大陸との関係に揺れ続ける香港。躁うつ病、介護、狭い住居などさまざまな香港の闇に鋭く斬り込んだ映画「誰がための日々」が2月2日から順次公開される。長編第一作目となる香港の新人監督・黄進(ウォン・ジョン)氏に話を聞いた。

 

 

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「誰がための日々」監督

黄進

プロフィール

(ウォン・ジョン) 香港城市大学クリエイティブメディア学院で映画芸術を学び、2011年に卒業。短編『三月六日』が第49回台湾金馬奨優秀作品賞にノミネート。同年IFVAコンペティション部門(オープンセクション)でグランプリ受賞、高雄映画祭でメディア審査員賞受賞、鮮浪潮短編映画祭で最優秀脚本賞受賞など、各国で高い評価を受ける。2016年、本作で長編作品デビュー。

──「ザ・リバティ」本誌やウェブサイトで、中国本土の思想や宗教、民族などに対する弾圧などについても伝えています。香港の現状はいかがでしょうか。

それらはあくまでも本土のことですね。香港では弾圧などは起きておらず、信仰も認められています。現在はまだ、一国二制度が終わっていませんから。

 

ただ、将来どうなるかはわからないと思います。

 

 

──作中では、主人公トンの彼女であるジェニーが、自分が通う教会にトンを連れていき、壇上で「怒りや恨みを忘れ、トンを許します」といった発表をし、拍手を浴びるシーンがあります。そんな彼女の姿に、数日間薬を飲んでいなかったトンの躁うつ病が悪化してしまいました。中国本土の宗教弾圧と関係するシーンかとも思ったのですが。

本土の現状は意識していませんが、このシーンは本作でいちばん伝えたかったテーマが込められており、この映画を凝縮したシーンとも言えます。

 

信仰によって人を救おうとすることは、もちろん悪いことではありません。ただ、やり方を間違えると、結果的に、かえって人を傷つけてしまうのです。

 

ジェニーには決して悪気はありません。彼女も、自分が救われた信仰によって、大切なトンを救いたかったのです。

 

しかし彼女は、壇上で発表することで、トンがどんな気持ちになるか、どう考えるかを一切理解しないまま、ああいうやり方をしました。結果、トンを深く傷つけてしまい、病気が悪化してしまいます。

 

お互いが理解し合わないと、相手を困らせたり、傷つけたりしてしまう。これがこの作品の大きなテーマです。このシーンはその象徴であり、理解し合うことはとても大切というメッセージを込めました。

 

 

──ウォン・ジョン監督がイメージする香港の希望の未来は、どのようなものですか。

難しい質問ですね(笑)。もちろん、香港に社会問題はたくさんありますし、政治が介入すべき部分もたくさんあります。私自身としては、公平でオープンな政府による、民主的なリーダーシップを期待します。

 

ただ、すべての問題を政策で解決できるわけではないと思います。

 

例えば、周りにトンのような躁うつ病の人がいたときに、私たちは正しく接することができるでしょうか。自分の何気ない発言や行動が、相手を傷つけたり混乱させたりして、本来は治るべき病気の治癒を遅らせたりしてしまうかもしれません。

 

相手を心から理解し、相手が嫌な気分になったり、傷ついたりしないように接する。そういった、一人ひとりの心の持ち方もとても大切だと思います。それは政府に頼るのではなく、自分たちで解決できることでしょう。

 

皆がお互いを理解し合える社会。そんな香港になることを望みます。(了)

 

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エネルギッシュな都市というイメージの裏で起きている、香港のさまざまな社会問題のありのままを描く本作。家族と向き合うことを避けて家に寄り付かなかった自分を責める父、そして病気に対する偏見や誤解と向き合う息子。すれ違っていた父子が次第に歩み寄る姿からは、人が本来持っている愛や慈しみの心を感じさせられる。

 

主演・トンを演じたショーン・ユー、父親役のエリック・ツァンは、共にアジアで活躍する超人気俳優。彼らは脚本を読み、すぐにギャランティーなしでの出演を決めたという。それほど強いメッセージ性を持つ本作からは、香港の現実を学べるだけでなく、一人ひとりの心を変えることによって、未来は希望に満ちたものになると理解できる。ラストシーンでは、観客それぞれが希望の未来を描けるはずだ。(駒井春香)

 

ストーリー

©Mad World Limited 

かつてはエリート会社員だったトンは、退職して火傷で不自由な身体になった母親の介護をしていた。トラック運転手の父・ホイは香港と大陸を往復していて家には寄り付かず、弟はアメリカで仕事と家庭を持ち、帰ってこない。一人で介護するトンに母はつらく当たり、トンのストレスは極限に達していた。そして排泄の介護中に事故が起こり、母が亡くなってしまう。トンの無罪は立証されるが躁うつ病の診断を受け、1年の強制入院をさせられる。退院後、父と狭い部屋で共同生活を送ることになるが……。介護や住居、躁うつ病など、香港が抱える問題に鋭く斬り込んだ衝撃作。

 

 

インフォメーション

【公開日】
2019年2月2日より、新宿K's cinemaほか順次公開
【配給等】
配給/スノーフレイク
【スタッフ】
監督/ウォン・ジョン(黄進)
【キャスト】
出演/ショーン・ユー、エリック・ツァン、エレイン・ジン、シャーメイン・フォンほか

 

【関連記事】

2019年1月19日付本欄 香港の社会問題に切り込んだ衝撃作「誰がための日々」ウォン・ジョン監督インタビュー(前編)

https://the-liberty.com/article.php?item_id=15313

 

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タグ: 誰がための日々  黄進  ウォン・ジョン  香港  介護  一国二制度  ショーン・ユー  宗教弾圧  

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