© 2018「体操しようよ」製作委員会

几帳面で真面目だけが取り柄の定年パパと、18年前に亡くなった母の代わりに父親の世話や家事の一切を引き受け、定年を機に父親に自活してほしいと望む娘のハートフル・ストーリーの映画「体操しようよ」が、9日から公開されている。

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老舗の文具会社を無遅刻無欠勤で勤め上げ、38年間の会社員生活に終止符を打った佐野道太郎(草刈正雄)。第二の人生がスタートした直後、一人娘の弓子(木村文乃)に、「佐野家の新しい主夫は、お父さんです!」と宣言され、エプロンを渡された。

パン屋で働きながら家事をこなす頼れる娘に家のことを一切任せてきた道太郎は、初めての家事に失敗ばかり。やる気もなく、散らかった家で無気力に飲んだくれる父親の姿に、イライラする弓子は何度もぶつかり続ける。

道太郎を気遣った元上司が、早朝のラジオ体操会に誘い出したのがきっかけで、1日一度は外出することにした道太郎は、ラジオ体操会のマドンナ・のぞみ(和久井映見)に会うために、いそいそと公園に出かけるようになった。

体操会の面々との交流も生まれ、体操会の会長で便利屋を営む神田(きたろう)の元でアルバイトもスタート。町の困りごとに奔走し、地域貢献のデビューを果たした道太郎はラジオ体操会の改革に着手するが、メンバーの怒りを買い、体操会は分裂してしまい……。

「会社の肩書きがなくても幸せになれる」

© 2018「体操しようよ」製作委員会

仕事一筋に生き、定年退職後に何をしていいかわからず、無気力になってしまう。そんな定年後の悩めるお父さんたちに贈るエール的な本作。

定年パパが、家事や地域の貢献に大奮闘することで、世代も立場も違う人々と出会い、導かれ、新たな世界で生きていく。その姿は、「会社の肩書きがなくても幸せになれる」ことを伝えているようだ。

娘に結婚を考える彼氏がいたことすら知らずにショックを受けたり、ラジオ体操会のマドンナに淡い恋心を抱いたり、体操会の定年3人組と衝突したり……。新しい世界での日々は、決して順風満帆ではない。

壁にぶつかるたびに落ち込み、時には周囲の人々の力を借りて立ち直りながら、道太郎は新たな世界に徐々に溶け込み、人生を謳歌し始める。娘・弓子との距離を縮めていく姿は、これまで避けてきた「父娘」としての本来の姿に戻ろうとしているようにも見える。

不器用で真面目だけが取り柄の定年お父さん・道太郎を演じたのは、正統派ダンディを封印した草刈正雄。定年退職した父を案じ、そっけない態度を取りながらも未来を思い自活をうながす娘・弓子を演じる木村文乃の好演も光る。衝突しながらも、お互いを思いやる「父娘」の姿をリアリティたっぷりに演じ切った。

本作では毎朝の「ラジオ体操会」が舞台だが、地域の集まりやボランティア活動、OB会など、同じ目的で人が集まる場面の、どこにでも起こり得る「事件」が描かれている。父娘のストーリーを楽しみながら、さまざまな集まりの中での人間関係の難しさや、皆がお互いに仲良く、助け合いながら活動するためのヒントも見つかるかもしれない。(駒井春香)

【公開日】
2018年11月9日(金)より全国ロードショー
【スタッフ】
監督/菊地健雄
【キャスト】
出演/草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知(黒猫チェルシー)/ 和久井映見
【公式サイト】
http://taiso-movie.com/