2018年10月号記事

リーダーの『人格力』

尊敬されるリーダーは「愛」の人

大川隆法・幸福の科学総裁による本誌連載「未来への羅針盤」をまとめた書籍『人格力』がこのほど発刊された。経営のプロはどう読んだのか。

(編集部 山本泉)

江口オフィス
代表取締役

江口 克彦

プロフィール

(えぐち・かつひこ) 1940年、愛知県生まれ。慶應義塾大学卒。松下幸之助の側近を23年間務め、松下哲学を伝えるための講演や執筆活動を精力的に行う。前参議院議員、PHP総合研究所元社長、松下電器産業(現パナソニック)元理事。著書に『正統派リーダーの教科書』(東洋経済新報社)など多数。

「格」は「いたる」と読みます。ですから「人格」とは、「人間に至る」ということでしょう。2045年には、技術が人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が起きるとも言われています。そうした時代になれば、最終的に人格力、すなわち人間に至る力だけが、技術に勝つことができる。『人格力』を読んで、そのことを改めて強く感じました。

例えば、「情報を取捨選択する」(45ページ)という指摘があります。情報が氾濫している時代ですから、その真贋を見極める判断基準が必要です。私は23年間、松下幸之助さんのそばで仕事をしてきましたが、松下さんは「公」を基調にした正しい商売を行っていました。大川総裁流にいえば、「愛」でしょうか。「多くの人のためになるか」が判断基準になります。

また、「優しさ八割、厳しさ二割」(92ページ)という指摘もあります。大川総裁は優しいですね(笑)。私なら、「優しさ七割、厳しさ三割」です。

「寛厳よろしきを得る」という言葉があるように、人はほめて育てるのが基本ですが、いざという時には叱らないといけません。ただし、仕事ができないから叱るというだけではダメで、「人はみな心の中に素晴らしいダイヤモンドを持っている」という「人間大事」の思想をベースにして、叱らなければいけません。

私がPHP総合研究所(以下、PHP)の社長に就任して、会社が大きくなったころ、相談役の松下さんに「君んとこ、ずいぶん人が多くなったな。君、叱ることもあるやろ。どういう叱り方してるんや」と聞かれました。「いろんなケースがありますね」と答えると、「君、心の中で手を合わせながら叱ってるか」と言われ、ハッとしました。

たしかに松下さんに叱られた多くの人が、「相談役に叱られた」と喜んでいたのです。それは、「自分の持つダイヤモンドを認めてくれた」と誇りに感じるからでしょう。

また、「尊敬されるリーダーの条件」(115ページ)についての指摘がありますが、結局、尊敬されるかどうかは、「愛があるか」、「公に生きているか」の違いですね。