2018年6月号記事

地域シリーズ 北海道

中国に「爆買い」される北の大地

未来型農業が"侵略"を止める

土地の買収という経済活動を通じて、北海道への"侵略"が静かに進んでいる。

それを食い止めるための法整備と未来型農業の可能性を探った。

(編集部 小川佳世子、山本泉、片岡眞有子)


contents


Part2

ロボット・AI農業の発展で

土地を活かし、人口を増やす

北海道の土地が売られるのは、「過疎が進み、使い道がない」からでもある。

どうすれば解決できるのか。

売られた土地の多くは、寂れた工業団地、山林、耕作放棄された農地などだ。

山林は良質な水を確保する上で欠かせないため、開発に制限を設ける必要があるだろう。

使われていない工業団地と耕作放棄地については、同時に解消できる一石二鳥の方法がある。ロボット技術や情報通信技術を生かして農業の生産性向上や高付加価値化を目指す「スマート農業」の推進だ。AIを搭載したロボットやドローン、人工衛星の開発・生産を進めるために若い研究者たちが大勢集えば、工業団地の跡地を有効活用できる。

機械の活用で農業の大規模化が進めば、東京都八王子市と同程度の面積とされる北海道の耕作放棄地(*)も活用できる。

産学官の連携が強い北海道

実は、北海道はスマート農業の先進地区で、産学官の垣根を超えた実証実験が行われている。

特に北海道大学は、農林水産業を「北海道の基幹産業であり、成長戦略の重要な柱」と位置付ける。次世代の農林水産業を研究する連携拠点として、「ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点」を構想。工業や農業はもちろん、販路の拡大も視野に入れ、ベンチャー支援、農産物貿易にかかわる商法や国際法の整備など、文系分野も連携して研究を進めようとしている。

北海道でスマート農業が発展・普及すれば、農産物の収量増加のみならず、技術開発そのものが未来産業になり得るため、工業・農業両面で雇用が創出できる。

北海道でスマート農業の研究や活用に携わる人に話を聞いた。

(*)農林水産省「2015年農林業センサス」によると、186平方キロメートル以上。

次ページからのポイント

北海道を「スマート農業」の発信基地に / 三浦尚史氏

人と機械の融合で「農業革命」を / 村上則幸氏

農業を未来産業にして雇用を増やす4つのポイント