《本記事のポイント》

  • トランプ大統領がダボス会議で演説し、自身の経済政策の実績をアピールした
  • 中国を念頭に、「公正で互恵的な通商関係が不可欠だ」という考えを強調
  • 家族や国家への愛が国を繁栄させる力になる

トランプ米大統領は26日、スイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で初めて演説した。

トランプ政権は昨年末、法人税率を大幅に引き下げる税制改革を実現し、さらに規制緩和を進めてきた。その経済政策の実績に触れ、「アメリカ経済は再び競争力を取り戻した」と述べ、「今こそアメリカの未来に投資すべき時だ」とアピールした。

また、「アメリカが成長すれば世界も成長する」と述べ、米国第一主義はアメリカ一国のためではなく、世界経済の発展にもつながるとの考えを示した。

不公正な貿易で利益を得る中国をけん制

世界各国の政経界の大物が集うダボス会議は、「経済のグローバル化」を象徴する場でもある。昨年のダボス会議では、初参加した中国の習近平国家主席がトランプ政権を念頭に、「保護主義への反対」を表明。習氏は、「中国がアメリカに代わって、世界経済のグローバリズムの旗振り役を担う」という考えを示した。

一方、不公正な貿易で利益を得ている中国を批判してきたトランプ氏は、今回の演説で、アメリカが今後、国際的なルールや秩序の強化に積極的に関与していく考えを強調。

そして中国を念頭に、「知的財産権の侵害、産業補助金、国家主導の経済計画など、不公正な経済の慣行は許さない」として、公正で互恵的な通商関係が不可欠だという考えを示した。

トランプが求めるのは「公正な貿易」

ダボス会議に象徴される「グローバリズム」が叫ばれる現代において、トランプ氏が主張する「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」は、「保護貿易主義」と批判されてきた。

しかし、今回のトランプ氏の演説からは、同氏が「保護貿易」よりも「公正な貿易」を目指していることがうかがえる。実際にトランプ政権は近日、中国・韓国などの不当廉売に対して米通商法201条に基づく緊急輸入制限(セーフガード)を発動させ、貿易制限を本格化させる行動を起こしている。

好調なアメリカ経済は世界に好影響をもたらす

また、トランプ氏が主張するように、アメリカ企業の国内回帰の動きは、アメリカ経済のみならず、他国の経済にも好影響をもたらすとみられる。

過去30年間続いた「グローバリズム全盛期」に、アメリカの企業が人件費の安い中国に工場を建てることで、安い中国製品がアメリカに流れ込んだ。それにより、アメリカの雇用や産業が衰退し、米国内の中産階級が引きずり降ろされた。

トランプ政権は、アメリカ国内に工場を戻し、雇用や所得を増やすことで、市場を活性化させている。米国民の購買意欲が高まれば、諸外国の企業も潤うことが期待できる。

「グローバリズム」と対立するトランプの哲学

そもそも、ダボス会議が象徴する「グローバリズム」とは、国を超えて地球全体を一共同体として捉えること。グローバリゼーションが進んだ世界では、国の垣根が低くなり、「国民国家」の概念は薄くなっていく。それぞれの国のアイデンティティを形成する家族や地域コミュニティ、歴史、文化などを他国と限りなく同化させていくという考え方だ。

こうした「グローバリズム」と対立する哲学を持つトランプ氏は、演説の最後に、会議に参加するメンバーに対し、「あなた方一人ひとりは、各国を代表するリーダーです」と述べたうえで、次のように語りかけた。

「私たちが持つ権力、あらゆる資源、そして発言力を、私たちだけのためではなく国民のために使い、彼らの重荷を取り除き、希望を高め、夢に力を与えるために、ともに問題を解決していきましょう。(私たちの国の)家族を守り、コミュニティを守り、歴史を守り、未来を守るために。これが、私たちがアメリカで行っていることです」

このメッセージは、家族や国家への愛がそれぞれの国を繁栄させる力になることを示している。それは国同士を分断させることではなく、それぞれの国を富ませ、結果的に世界を豊かにしていくことにつながる。

(小林真由美)

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