「中国の民主化運動の源流」と言えば、革命家・孫文です。そんな彼が人に、「あなたの革命思想はどこで生まれたのか」と聞かれた時、こう答えたといいます。

「幼少時に、洪秀全の話を聞いていたから」

洪秀全とは、19世紀、清朝の支配に反旗を翻し、「太平天国の乱」を指揮した革命家。当時の中国では一般的に、"鎮圧された謀反者"という認識でしかなかったでしょう。

しかし孫文が彼を「憬れの英雄」と認識したのは、幼少時、たまたま家の前で「洪秀全が率いた軍にいた」という老兵が、その偉業を語り伝えているのを、熱心に聴いていたからでした。

洪秀全の姿を見ていたからこそ、老兵の話は鬼気迫っていたのでしょう。強い感銘を受けた孫文はその後、自身を「洪秀全第二世」と称します。そして、中国全土を揺るがす革命に身を投じることになるのです――。

事実上、中国の民主化運動の"源流の源流"とも言える洪秀全。彼の革命は、結果的には鎮圧されてしまいましたが、貧しい農民を組織して、屈強な清朝の正規軍を次々と打ち破り、一時期、国をも建設するという、凄まじい勢いを持つものでした。だからこそ、鎮圧されてもなお、後世に語り継がれることになります。

そんな洪秀全、そしてその支持者たちの情熱を支えたのが、彼が見た、ある神秘的な「夢」でした。本欄では、まるで映画のようなその概要をご紹介します。