《本記事のポイント》

  • 記者クラブの党首討論会に呼ばれる条件は「国会議員5人」「得票率2%」を満たした党。
  • この条件は、政党の定義とは関係がない。公選法に政党の定義はない。
  • 公選法を厳密に適用するなら、選挙の公正を害する選挙報道も改めるべき。

テレビや新聞で、衆院選に向けた各党の政策や活動の様子が連日報じられている。

公示を2日後に控えた8日には、日本記者クラブで党首討論会が行われた。

ただ、そこに集まったのは8党の党首のみ。8党以外にも、衆院選に立候補を表明している政党があるが、呼ばれなかった。

そのうちのひとつ幸福実現党は、幹事長名で党首討論会への参加要望を出したが、記者クラブからは断られた。

同党の松島弘典幹事長は、「公職選挙法を根拠に、国会議員が5人以上、国政選挙の得票率が2%以上の政党でないと招かれないということですが、納得できません。私たちは全国で76人の候補者を立てています。その主張は他党と同じく公平に報じられるべきです」

政党の定義といえるのか

記者クラブが挙げた、「国会議員5人以上」「国政選挙の得票率2%」の要件は、公職選挙法(公選法)の86条1項、86条の2第1項、86条の3第1項に出てくる。

これらはそれぞれ、衆院小選挙区、衆院比例代表、参院比例代表について、立候補届出の要件などを定めたものだ。決して、政党自体を定義する条文ではない。

もうひとつ政党について同様の要件が示された法律として「政党助成法」がある。だが、これは政党助成金について定めた法律だ。2条1項に「この法律において『政党』とは」と書かれていることを見ても、税金を受け取れる条件を示しているに過ぎず、普遍的な政党の定義が書かれているわけではない。

ゆえに、国民の知る権利に奉仕すべきマスコミが、立候補の届出の要件などを定めたに過ぎない2つの要件を金科玉条のごとく持ち出し、新興政党の主張を「黙殺」することに正当性はないと言える。

公選法は、既存政党を守るため、新しい政党に対して高い参入障壁を築き、国民の政治参加の自由を奪っている。公選法を盾に権力側におもねり、新興勢力の参入阻止に加担するマスコミの主張には悲しさを覚える。

※ちなみに、この2つの条件に合致しない「政党その他の政治団体」から衆院小選挙区に出る候補者は、無所属候補者と同様に、投票所において所属政党が記されない、政見放送を利用できないなどの差別的扱いがなされる。なお、比例代表の場合は、一定数以上の候補者を出せば、立候補ができる。

選挙の公正を害すれば罰則もあり

もし、そこまで公選法を「厳密に」持ち出したいなら、選挙報道に関するルールもしっかり守るべきではないか。

公選法138条の3には、「選挙に関し、公職に就くべき者を予想する人気投票の経過や結果を公表してはならない」との定めがある。これは、マスコミが当たり前のように出す、選挙結果予測報道と何が違うのか。

現状では、「面接や電話で口頭回答を得る方法で調査をした場合は、『人気投票』ではない」という解釈により、「報道」の名の下、選挙前に大方の議席数がはじき出されている。

だが、この条文の新設当初は、「新聞紙又は雑誌」のみが対象だった。すなわち、マスコミ報道が選挙結果を左右することを危惧して設けられた規定といえる。立法趣旨や成立過程から見た場合、選挙予測報道は公選法違反の疑いが濃厚だ。

さらに、公選法には、「虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」とある(148条1項ただし書)。一部の政党の党首や候補者だけを討論会に呼んだり、特定の候補者だけを大きく扱ったりする報道のあり方は、特定の候補者だけが選挙に出ているような印象を与える点、「事実の歪曲」にあたる可能性がある。少なくとも、「選挙の公正」を害していることは間違いない。

このルールに反した新聞や雑誌の編集担当者や経営者は、「二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金」に処せられるとも定めている。(公選法235条の2第1号)

かつて「社会の木鐸」と呼ばれ、権力側の暴走に目を光らせ、真実を示して社会を善導することを使命としていたマスコミの誇りはどこに行ったのか。

国民に正しい情報を伝える使命を忘れたならば、マスコミの存在意義は失われるだろう。(小川佳世子)

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