《本記事のポイント》

  • 選挙のたびにバラまく自民党は「合法的買収」を行ってきた
  • 「年金破たん」「借金1100兆円」も買収の結果
  • 買収のツケとしての消費税増税と不況

民主党政権による「子ども手当」「高校無償化」について、ある政治家がこう批判した。

「民主党政権の本質は社会主義的政権であると言ってもいいと思う。まず給付ありきだ。国から給付をもらおうという堕落した国家への道を踏み出そうとしている」

「子育てを家族から奪い去り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化だ。これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことだ」

この至極まっとうな批判をした政治家の名前は、安倍晋三。現在、当時の民主党政権も真っ青なバラまき政策である「教育無償化」を訴える張本人だ。

バラまきの弊害は、安倍首相も頭では分かっているのかもしれない。しかし、「加計問題」などで支持率が下がる中、子育て世代に受けのいいこの政策は、「安倍政権延命」のための頼みの綱であるようだ。

自民党は選挙のたびにバラまく

民主党のバラまきを批判した自民党だが、その自民党は長い政権運営の中で、民主党をはるかに上回る額のバラまきを行ってきた。

例えば自民党は1999年には、約6200億円の地域振興券(上図)を支給した。発案者である公明党と選挙協力をし、その支持母体である創価学会の票を得ようという狙いがあったと見られる。

選挙前は特に露骨だ。

2009年3月には、景気対策の一環とうたい、国民1人当たり1万2千~2万円、総額2兆円規模の定額給付金(上図)を支給した。当時この政策は、同年8月の衆院選に向けた「票目当て」と、マスコミや国民から批判された。

安倍政権も、2016年の参院選の直前である6月中に、約3600億円もの予算を組み、低所得高齢者1人当たり、3万円を支給することを決めた。

そして2017年の衆院選では、「教育無償化」という、さらなるバラまき政策を主張。消費税の増税分を使うというが、あれだけ騒いだ「財政再建」は、どこへ行ってしまったのだろうか。

投票依頼の対価として、お金を渡すことは違法だ。例えば以前、松島みどり氏が、「うちわ」の配布が公職選挙法違反と指摘され、法相を辞めた。

しかし、自民党が政府の政策として、税金を配分すれば、違法ではなくなる。安倍政権は教育無償化に2兆円を当てるとしているが、堂々と税金を使えば「合法的な票の買収」になるのだ。

「年金破たん」も買収の結果

「合法的買収」は他にも様々な形で行われている。

例えば、年金制度が事実上破たんしつつあるのも「合法的買収」の結果だ。

高齢世代は、払い込んだよりも3000万円近く多く年金をもらえて、若い世代は払い込んだ額より2000万円以上少ない年金しかもらえない(学習院大学経済学部の鈴木亘教授の試算)。自民党がこうした制度設計を続けてきたのも、高齢者層が「大票田」だったためだ。

もちろんこの状況に、若者世代は反感を持っている。そこで自民党は、「教育無償化」によって、若者世代を次の「大票田」に変えようとしているのだ。

「建設業」「農業」も大票田

バラまきは、特定の業界に対しても行われてきた。

例えば、約500万人が従事する建設業界も、公共事業に左右されるため、自民党の「大票田」だ。業界内で営業するために所属しなければいけない協会などは、党員集めも行っている。その代わりに政府は、公共事業の発注、補助金投入などを行う。

1千万人もの関係者がいる農業従事者も、「大票田」だ。ここにも、多額の補助金が投入されている。

「合法的買収」の結果が「借金1100兆円」

こうした「合法的買収」が長い間続けられたツケは、国民に回されている。それが、「政府の1000兆円以上の借金」という結果だ。特に選挙制度が、1つの選挙区で1人しか当選しない「小選挙区制」になってから、自民党政府は、よりバラまきを強化。政府債務も急速に積み上がった。「加計・森友問題」などは、かわいい話にさえ見えてくる。

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この政府債務のもたらした弊害は大きかった。政府は「財政破綻すれば、国民生活が壊れる」「一人当たり○○円の借金」などと訴え、消費税などの増税を繰り返してきた。その結果、日本経済は長期停滞し、国民の所得も減ってしまった。

選挙にあたり、「消費増税」「教育無償化」の是非を考える際には、こうした「合法的買収」「買収のツケとしての増税と不況」という歴史も念頭に置く必要がある。

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