教育無償化する前に、「中東のシリコンバレー」の教育を学べ

教育無償化する前に、「中東のシリコンバレー」の教育を学べ

企業が密集するイスラエルの都市テルアビブのアズリエリセンター(Stanislav Samoylik / Shutterstock.com)

 

イスラエルが今、産業界で「中東のシリコンバレー」として注目を集めている。

 

関西の経済団体である関西経済同友会の視察団がこのほど、ベンチャー企業の育成強化のためにイスラエルを訪れ、自動運転の関連技術で注目を集めている企業などを視察した。

 

視察団は、エルサレムにある自動運転の関連企業「モービルアイ」を訪れ、自動運転の実験車両を見学。その他にも現地の大学を訪れて、学生や研究者が学術研究を活用したベンチャー企業を立ち上げる際の支援についてなどの聞き取りも行ったという。

 

関西経済同友会の深野弘行委員長は、「大学がビジネスに応用できる可能性がある学術研究を積極的に情報発信したり、資金的に支援したりする取り組みは、日本でも導入すべきだと感じた」などと語った。

 

 

「中東のシリコンバレー」イスラエル

イスラエルは、スタートアップ(新規企業)が年間800~1000社誕生し、「高度人材」を求めてグローバル企業が250社ほど進出する、イノベーション大国となっている。

 

その背景には、70年に祖国を滅ぼされて以降、ユダヤ人がディアスポラ(散らされた者)として辿った、不安定な歴史がある。

 

常に迫害の危険にさらされてきたユダヤ人にとって、自由になる財産は人的資源しかない。だからこそ国境を越えて持ち運べる資源、"人材"の育成と"アイデア"の醸成が重視されてきた。その結果、ノーベル賞受賞者の2割を占めるなど、ユダヤ人の中から優れた頭脳が次々と輩出されている。

 

 

ユダヤ式英才教育と徴兵制

では一体、どのようにして人材が育成されるのか。その秘密は、幼少時からの厳格な英才教育と、最先端技術を学ぶ徴兵制にある。

 

日本では、幼少時から塾や学校に教育を任せがちだが、ユダヤ教徒は家庭学習を重視する。そして、物心ついたときから、ユダヤ教の教義や聖典を覚えさせるため、徹底的に「トーラー」や「タルムード」などの聖典を暗唱させ、解釈を理解させる。

 

それに加え、数多くの本を与えて先人の知恵に学ぶ機会を生み出し、「子供を絶対的に信頼している」と態度で示すという。また、それぞれの親が、自分の子供の興味を見極めて幅広い情報を与え、子供の考えや意見を尊重する中で、子供の個性を伸ばそうとする。

 

ユダヤ人は基本的に、「子供の個性に応じた教育を、親が責任を持ってすべき」という考え方を持っているのだ。

 

さらに、実践的な軍事知識を学ぶ機会があることも大きい。

 

イスラエルでは、高校卒業後に、男子3年間、女子2年間の徴兵期間がある。その中で最先端の実践に則ったソフトウェア開発や、プログラミング教育、チームで働くことの重要性を徹底的に学ぶ。

 

優秀な人材に対しては、徴兵前に国家規模のスカウティングが行われる。スカウトされれば軍に入った後、さらに研究開発(R&D)センターで訓練を受け、その中でも選ばれた人は8200という特殊部隊で軍の最先端のノウハウを学ぶ。

 

こうして、2年または3年の訓練を通して、IT技術の英才教育を受けるが、これが実用的かつ実践的な起業家育成プログラムの一種ともなっている。

 

 

日本もイスラエルから学ぶべき

幼少期から家庭での英才教育を受け、最先端の軍事技術を身に付けたユダヤ人は、類まれなる発想力、技術力、起業家精神を持った起業家や高度人材として活躍するようになる。

 

この好例が、イスラエルの起業家で、ベタープレイスのCEO、シャイ・アガシだ。彼は世界に先駆けて電気自動車の可能性に言及し、2008年にカルロス・ゴーンの協力を取り付けて、交換可能なバッテリーの開発に取り組んだ。

 

この交換可能なバッテリーは、実用化が極めて困難だとされていた。メルセデスの研究開発部門責任者、トーマス・ウェバーは、バッテリー交換の際に、「感電事故や火災事故が引き起こされる可能性がある」としてこの技術に懐疑的だった。しかしアガシは、空軍の爆撃機が爆弾を落とす際に使っているフックを応用することで、この問題を解決してしまったのだ。

 

まさに、軍事技術の知識が、類まれな発想力へと転化した事例と言えよう。

 

周りを海に囲まれている島国ではあるが、日本も、資源が乏しく国土が小さいという点ではイスラエルに共通している。だが、イスラエルとは違い、古典や宗教的な教養などはあまり重視されておらず、子供の個性を伸ばす教育も十分とは言えない。また、最先端の科学技術の集合でもある軍事技術については、タブー視され、研究を避けている大学がほとんどで、学べる機会に乏しい。

 

日本では「人材への投資」として「教育無償化」が議論されているが、「お金を注ぎ込む」ことの前に、「教育の質を見直す」ことも必要なのではないか。

(HS政経塾 須藤有紀)

 

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2017年5月25日付本欄記事 「トランプ氏が目指す中東和平 イスラエル人はアメリカより日本に期待!?」

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2017年9月14日付本欄記事「『イスラエル建国は、ユダヤ人の歴史への"革命"だった』 反シオニズムのユダヤ人教授が語る」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=13497

タグ: 教育無償化  中東  シリコンバレー  経済同友会  モービルアイ  イスラエル  英才教育  

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