《本記事のポイント》

  • 中国で軍幹部4人が失脚。習氏が「胡派」の排除を狙ったものとみられる。
  • 党大会に向けて習氏は権力基盤を固めており、「党主席」の復活も目指している。
  • 人間を「手段」と見る全体主義から、「目的」とする民主主義への転換が求められる。

中国の習近平・国家主席が独裁体制を強めている。中国人民解放軍の最高指導機関「中央軍事委員会」のメンバー3人が拘束、1人が更迭された。

拘束されたのは、前海軍司令官の呉勝利氏、前統合参謀部参謀長の房峰輝氏、中央軍事委員会政治工作部主任の張陽氏。2日付産経新聞によれば、同じく中央軍事委員会メンバーで、空軍司令官を務める馬暁天氏も更迭が確認されたという。

失脚した房氏、張氏、馬氏の3人は、習氏の前の国家主席だった胡錦濤氏と関係が深いとされ、今回の動きは、習氏が軍から「胡派」を排除したものとみられる。

その一方で、習氏は自身と関係の深い軍人を要職に抜擢し、軍への影響力を強めている。

10月の党大会に向けた派閥争い

一般的に、中国共産党内では3つの派閥があると言われる。習氏が率いる「太子党」、胡錦濤・前国家主席をトップとする「共青団」、そして、胡氏の前に国家主席を務めていた江沢民氏を中心とする「上海閥」だ。

この3つの派閥が、「チャイナ・セブン」と言われる共産党の最高指導部「政治局常務委員」にどれだけの人を送り込めるかを争っている。チャイナ・セブンの新メンバーは、10月18日から開催される、中国共産党全国代表大会(党大会)で発表される。

習氏はこの党大会に向け、自身の権力基盤を固めている真っ最中だ。

習氏自らチャイナ・セブンを無力化する!?

さらに、習氏はチャイナ・セブンの上に「党主席」という新たな役職をつくろうとしている。これをつくれれば、チャイナ・セブンを無力化でき、習氏1人の意志で全てを決められる体制となる。通常であれば、習氏はあと5年で最高指導部から引退しなければいけないが、もし党主席に就任できれば、少なくとも10年程度は権力を掌握できるのだ。

「建国の父」毛沢東は、亡くなるまで30年間以上この役職に就いていたが、権力があまりに集中することから、その後、廃止されていた。

習氏は「個人崇拝」の確立を目指している、と思わずにはいられない。

求められる政治体制の転換

習氏は国民に対する影響力も強めている。

小・中学校では、新学期が始まる1日から新たな教科書が採用された(2日付朝日新聞)。教科ごとに、共産党が国を発展させてきた歴史や、尖閣諸島や台湾、チベット自治区などが中国領土であることの由来、共産党革命者たちを英雄視する文章などが盛り込まれている。

1日には国歌法も可決させ、国歌の商業広告やBGM利用を禁止した。国歌の歌詞を変えたり侮辱したりすれば拘留されるという。国民の愛国(党?)心を高めることで、求心力を高めようとする意図がうかがえる。

中国大陸では、長い歴史の中で、多くの王朝の興亡が起きた。1949年の建国以降も、激しい権力闘争の下で、多くの人民の命が犠牲になった。

だが、本来、追求されるべきは、「誰が」正しいか、ではなく、「何が」正しいか、だろう。政治体制そのものが変わらなければ、中国の国民が真の自由と幸福を手にすることはない。

人間を何かを達成するための「手段」と見る全体主義から、一人ひとりの人間そのものを「目的」と考える民主主義への転換こそが、本当の意味で中国の人々を幸せにする。

(片岡眞有子)

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