《本記事のポイント》

  • 安倍首相が教育国債を「投資」扱い
  • 学費を抑える飛び級制度
  • 日本もAPプログラムの導入を

高等教育無償化の議論が具体化している。このほど放送されたBSフジの番組で、茂木敏充経済再生担当相が、無償化に向けた有力案を2案に絞って検討する方針だと明らかにした。

有力案は、日本版高等教育拠出金制度(HECS)の導入と、給付型奨学金を拡張する案の2つ。HECSはオーストラリアの例を参考にするとしており、在学中の授業料が無償になる代わりに、卒業後、所得に応じて返済する仕組み。いずれも数兆円規模の予算を必要とし、国債の発行は必至となる。

安倍首相が教育国債を「投資」扱い

「人づくり革命」を掲げる安倍晋三首相は、7月に開かれた日本青年会議所主催のフォーラムでこう語っている。

「望む人が専修学校にも大学にも行けるような仕組みをつくっていけば、将来活躍をして収入を得て税収が上がり、新たな富を創っていくことにもつながる」

首相は、教育国債は次の世代に借金を残すのではなく、あくまで資産になるとしている。だが、大学教育の質の低下が問題となっている今、数兆円かけてまで無償化することに、どれだけの効果があるのか疑問だ。

学費を抑える飛び級制度

優秀な学生が「4年分の学費が払えない」ことを理由に、進学をあきらめるケースもあるが、莫大な予算を必要とせず、安く大学に行ける仕組みはないものか。

実はアメリカでは、授業料を安く抑えられる「APプログラム(Advanced Placement Program)」という制度がある。

APプログラムとは、高校在学中に大学レベルの授業を受けることができ、終了時に試験に合格すれば、大学入学後も単位として認められる仕組み。運営はNPO団体「カレッジボード(College Board)」が行っており、プログラムに登録している学生は2016年時点で261万1172人に達し、4199校の大学が採用している。

APプログラムは高校に通いながら大学の単位が取れるため、大学の在学期間を短縮することができる。場合によっては、1年、2年で卒業することも可能だ。

文部科学省によれば、日本の大学の年間平均授業料は、最も安い国立大学で53万5800円、最も高い私立医歯系大学で273万7037円だという。在学期間が2年間短縮できれば、100万円~540万円ほどの学費が浮く計算になる。優秀で学ぶ意欲がある子供がいるのに、学費を払う経済力のない家庭にとっては、大きな助けになるはずだ。

日本もAPプログラムの導入を

日本でもAPプログラムを導入すべきという声がある。日本経団連の教育問題委員会が2014年5月に、中央教育審議会に意見書を提出し、APプログラムの導入を提案している。日本の一部大学に対しては、飛び入学が認められているが、細かな条件が課せられているため、あまり普及していない。

日本も、大学教育の未来を考えるにあたって、飛び級制度を普及させてはどうか。高等教育の無償化を検討する前に、現状の教育制度を見直す方が先決だろう。

(HS政経塾 須藤有紀)

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