《本記事のポイント》

  • 中国―香港間の高速鉄道駅に、一カ所で出入境が管理できる施設が建設される方針に。
  • 香港の民主派団体などは、香港域内の駅や路線上にも中国側の"司法権"が及ぶと懸念し、強く反発。
  • 世界中で経済力を軍事力に変える中国の野心から、香港の自由と繁栄を守る必要がある。

中国から「高度な自治」が認められていたはずの、香港の自由が侵されている――。

香港の行政トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は7日、就任後初めて北京を訪問し、中国鉄道企業トップと会談した。香港と中国・広州を結ぶ高速鉄道の建設プロジェクトについて、香港側のターミナル駅に中国側の出入境施設を併設する方針を確認した。香港の民主派団体などは、香港域内の駅に中国の"司法権"が及ぶことを懸念し、強く反発している。8日付産経新聞などが報じた。

香港は1997年にイギリスから中国へ返還された後も、「一国二制度」が保障され、高度な自治が認められていた。そのための、中国から香港に在来線で行く際には、まず中国側の出発駅で出境手続きをし、さらに香港側の到着駅で入境手続きをする必要があった。

しかし、香港公共放送RTHKによると、林鄭氏は、「(一カ所で中国と香港の入出境手続きができる)『一地両検』があって初めて高速鉄道が社会経済効果を発揮できる」と説明。香港政府は、香港側のターミナルに中国の税関職員が本土から通勤して、出入境管理の執務を行う計画を進めている。

香港人が中国に拘束されやすくなる

香港の憲法にあたる香港基本法は、香港域内で中国の法律を執行することを禁じている。民主派の一部は「一地両検は違法で『一国二制度』に反する」として、香港の裁判所に提訴した。

香港の駅構内にまで中国の司法権が及ぶことで、「中国当局や香港警察が身柄拘束した人物を、香港から高速鉄道で直ちに本土に移送できるようになる」と警戒する民主派の元議員の声も、産経新聞に掲載されている。

2015年秋に起きた「銅鑼湾書店事件」では、中国共産党を批判する書籍を扱ったことで香港の書店関係者5人が相次いで中国当局に拘束された。関係者は香港から中国本土の深センに入境した時に中国側に身柄を拘束された。

親中派とされる林鄭氏は、「一地両検」による利便性向上ばかりを強調しているが、中国が香港の自治権を侵害することに対する問題意識はほとんどない。「一国二制度」を無視した香港の中国化はじわじわと進んできている。

世界中で経済力を軍事力に変える中国

このように、中国のビジネス相手国が目先の経済的な利益に目がくらみ、中国による侵略の脅威を招いている事例は、世界中で起きている。

例えば、中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路(新シルクロード)政策で、アジアやアフリカ地域を中心に、空港や港湾、鉄道などのインフラを整備している。中国はこうした援助の見返りとして、中国の軍事基地をつくりたい考えだ。中国は7月、アフリカ北東部のジブチに軍の補給基地を開設し、軍事的影響力を拡大する狙いを隠そうともしていない。中国への経済依存は、軍事的な「植民地」につながるリスクをはらんでいる。

その他にも中国は、アメリカ、オーストラリア、フランスなど世界各国で森林や農地などを「爆買い」し、日本でも北海道や沖縄、新潟などの広大な土地を買収している。人口減少や過疎の問題に直面する地元では、「中国の人口や資金力に頼りたい」という気持ちもあるようだ。中国は国際的に批判されながらも、経済力を武器として、軍事的な影響力を広げる活動を止める気配はない。

香港を中国にしないために

大川隆法・幸福の科学総裁は、これまで数多くの書籍で香港の自由が侵されている問題に触れてきた。著書『国際政治を見る眼』では、次のように述べている。

大人や年を取った人たちは、『すでに香港は中国の一部なのだからしかたがない』と諦めている面もあります。ただ、学生のほうは諦めないでいるわけです。したがって、もう少し思想的に支援ができればよいと思っています。中国の十数億人は、本当にかわいそうです。中国政府には、『人は餌で釣れば"飼育"できる。飼い馴らせる』と思っているようなところがあるので、『やっていいレベルと、やってはいけないレベルがある』ということを知るべきです

親中派が行政トップになった香港は、今後、中国に吸収される危険性が高まることが予想される。香港には、中国政府と戦える軍隊などがない。今ある自由や繁栄を守るためには、国際世論などの後押しが必要だ。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『国際政治を見る眼』 大川隆法著

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