(画像は Wikipemia commons より)

《本記事のポイント》

  • 稲田防衛相が、南スーダンPKOの日報が破棄された問題の責任をとって辞任した。
  • 稲田氏は、防衛相として自由に発言することができずに、もどかしさを抱えていたとみられる。
  • 国の防衛トップが国防について自由に議論できる体制を整える必要がある。

稲田朋美防衛相は28日午前の記者会見で、南スーダンPKO(国連平和維持活動)の日報が破棄された問題に関する特別防衛監察の結果を受け、大臣を辞任することを明らかにした。

稲田氏は、2012年末の第二次安倍政権発足以来、内閣府特命担当相として初入閣し、自民党政調会長、防衛相と異例のスピードで出世を続けた。安倍首相から「寵愛」ともいえる厚遇を受け、一時は次期候補とも目されていた。

しかし自民党内では、稲田氏に対して「大臣を続けるだけで支持率が下がる」「もっと早く辞めさせるべきだった」などの声も上がり、稲田氏をかばい続けてきた安倍首相への批判も高まっているという。

日報隠蔽の混乱や失言が批判の的に

稲田氏、黒江事務次官、岡部陸上幕僚長など、防衛省の重要ポストが一度に辞任する原因となった「日報問題」とは何だったのか。

今年の5月まで南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊の部隊が、同国の政府軍と反政府勢力による大規模な武力衝突を受け、その状況を「戦闘が生起」と日報に記載した。

PKO参加5原則では、政府が定義する「戦闘行為」があった場合、自衛隊はPKOに参加できないと定められている。稲田氏は、この日報の文言について「事実行為としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、(国会では)武力衝突という言葉を使っている」と発言。この発言が大きな批判を浴び、野党からは辞任要求まで飛び出した。

防衛省はその日報を「廃棄した」として開示しなかったが、その後の調査で、実は陸自内に電子データが保管されていたことが分かった。自衛隊幹部は、保管されていた日報の事実を公開しないことを決定し、その旨を稲田氏に報告、了承を得たとされている。しかし稲田氏は当時の国会で「自衛隊内部に日報は残っていない」と答弁。稲田氏は28日の会見でも「私自身報告を受けた認識はない」としたうえで、一連の日報問題の監督責任を取り辞任した。

稲田氏の答弁にも問題があることは事実だが、戦闘があるところではPKOに参加できないという憲法9条の決まりの方がおかしいのではないか。憲法9条のルールから外れる発言をすると、すぐに野党が猛批判し、政治家をこき下ろそうとする風潮にも問題がある。

活躍できぬまま辞任へ

稲田氏の防衛相就任後、野党議員は就任前の発言を度々引用し、稲田氏の防衛相としての公式見解との矛盾点を正してきた。

例えば、雑誌「正論」2011年3月号で稲田氏は、「長期的には日本独自の核保有を国家戦略として検討すべきだ」と述べていたが、2016年9月30日の民進党・辻元清美氏の質問に対しては「非核三原則を堅持し、核のない世界に向けて全力を尽くす」と防衛省の公式見解を述べた。

また2012年7月25日の衆院外務委員会では、「誰の目にもわかるように(尖閣諸島に)上陸し、自衛隊を配備するなど実効支配を強めるべきだ」と発言していたものの、2016年10月3日の民進党・前原誠司氏の質問に対し、「現時点で自衛隊を配備することは検討していない」と述べた。

稲田氏の守護霊が語った「もどかしさ」

稲田氏は就任前に主張していたことが実現できないもどかしさを感じていたのではないだろうか。

大川隆法・幸福の科学総裁が4月に収録した稲田氏の守護霊霊言は、そのような本音が垣間見える。

稲田氏の守護霊は防衛相としての自身の仕事について聞かれ、次のように不満を語った。

大いに不満ではある。女が、スカートを穿いてるだけで、『防衛なんかできない』と思っとるやつがいっぱいおるんで。自衛隊もそうだし、防衛省の幹部たちもみんなそう思って、『ただのお飾りだ』と思っとるから。『とにかく黙っておいてくれ』っていう、こればっかりだ

日本のねえ、この空気のような支配体制だと、防衛大臣が突出して意見を言った場合、ここだけが"生贄になる"のは確実なので。やっぱり、本当に責任を持とうと思ったら、そらあ、『水面下で粛々と準備をしとかないといかん』っていうことだと思うので

また、防衛対策を取ろうとするとすぐに足を引っ張られることについても、こう苦言を呈した。

マスコミは(国民を)護りたくないんだからしょうがない。マスコミが護りたくないんだから、被害が出ないかぎり動かないんで。被害が出たら、急に『対策を取れ』って言い始めるけど、被害が出ないで、それをやろうとすると、すぐに足を引っ張って、政治家を引きずり降ろすから、しかたない

稲田氏の仕事ぶりに問題がなかったとはいえない。ただ、日本では防衛についてのタブーが多すぎる。今回の稲田氏の辞任を契機として、日本の防衛トップが現実的に国を守るために自由に発言できる体制に変えていく必要があるのではないか。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『「戦えない国」をどう守るのか 稲田朋美防衛大臣の守護霊霊言』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1856

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