《本記事のポイント》

  • 岸田外相が国連で2018年までに10億ドルの国際支援を表明
  • 財政悪化と経済停滞の中でどこからお金が出るのか
  • 新興国が求める日本の教育プログラム

岸田文雄外相は、ニューヨークの国連本部で開かれた「持続可能な開発目標(SDGs)」の会合で日本の取り組みについて発表した。

SDGsとは、2030年までを目標に世界の持続可能な発展を目指す長期的な開発目標のこと。特に先進国を含むすべての国が自国の豊かさを追求しながらも、国際社会の状況に目を向けた取り組みを行うことを目的としている。

今回の会合で岸田外相は、「市民社会や民間企業など多様な英知を結集させ、具体的なアクションを起こす」と述べ、子供や若年層の教育、保健、格差の是正に向けた取り組みで、2018年までに10億ドル(約1100億円)の国際支援を行う考えを表明した。

1100億円はどこから?

岸田外相は、「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」がヒットしたピコ太郎氏に替え歌を依頼して日本の取組みをアピール。日本政府が主催したレセプションでは、ピコ太郎さんの曲に合わせて「貧困をなくそう」といったSDGsの目標を約270人の各国関係者の前で披露した。

約1100億円の支援を国際社会に大きく訴えかけたわけだが、この金額が現実的かどうかには疑問が残る。国際支援を行うのは良いことだが、日本国内の財政状況悪化を理由に消費増税を実施して、さらなる経済の停滞を招いている中で、どこからそのお金が出るのだろうか。

国際社会が見ているのは、単なる口約束のPRなのか、実際に役立つ支援ができるかだろう。世界で本当に求められているものに照準を当て、日本ならではの支援を展開すべきだ。

注目度の高い日本の教育

例えば、日本の教育が途上国から注目を集めていることから始まった、官民一体の「教育の輸出」がある。

アジアの新興国には、日本の教育プログラムを自国に導入することで国の発展を促進したいという願いがある。ベトナムのハノイにある小学校では、日本のスポーツメーカーであるミズノが協力した体育の授業が行われ、体育の授業が一般的ではないベトナムで、画期的な取り組みだったなどと報じられている。

また、日本国内では「教科書検定」問題などが取り沙汰され、あまり良いイメージがない教科書も、注目度は高い。日本の教科書は分かりやすくまとめられているため、学力が身につきやすいと高く評価されている。他にも規律を重視するという点や、道徳観・倫理観を養えるといった日本教育のメリットに着目したニーズは、意外にも高い。

国連のように各国の代表が集まる場での発言は、影響力も大きい。今回のSDGsも法的な拘束力などはないが、先進国「日本」の考え方は国際社会でも注目される。パフォーマンスや金額ではなく、日本だからこそできる、本当に役立つ支援や取り組みを明確に訴えていく、堅実な姿勢が重要だ。(詩)

【関連記事】

2017年1月6日付本欄 「ポスト安倍」への意欲見せる岸田外相 外交成果が示す、政治家としての「器」

http://the-liberty.com/article.php?item_id=12431

2016年8月28日付本欄 日本がアフリカに3兆円を投資 「植民地主義」終わらせる世界史的意義

http://the-liberty.com/article.php?item_id=11863