《本記事のポイント》

  • トランプ政権が日本の鉄鋼製品に初の制裁関税
  • 対日貿易赤字の背景に「日本車の高品質」!?
  • ベンツやBMWは同条件でも人気だが……

トランプ政権はこのほど、日本から輸入する鉄鋼製品に最大48.67%の制裁関税を課すことを決定した。政権発足後、日本製品への制裁関税が決定したのは初めてとなる。

同政権は、貿易赤字削減を目下の課題としている。3月の対日貿易赤字が、前月比55%増の72億ドル(約8,100億円)だと発表された時、ウィルバー・ロス米商務長官は「これ以上、対日貿易赤字に耐えられない」と日本を名指しで批判している。

今後、鉄鋼のみならず、あらゆる日本製品に対して厳しい対応が取られることが予想される。

中でも注目されるのは、赤字の大半を占める自動車だ。トランプ大統領は日本に対して「非関税障壁により、米国産自動車を売れにくくしている」と批判している。「非関税障壁」は、エコカー減税、軽自動車税、安全規制などを指す。2国間通商協議では「非関税障壁」の撤廃などは日本に要求される可能性が高い。

"問題"は日本車の性能のよさ

しかし、「非関税障壁」を撤廃したとしても、必ずしも米自動車が売れるわけではないだろう。

米自動車の多くは燃費が悪く、大型で小回りがきかない。そして日本の道路はアメリカより狭いので、選ばれにくいのは自然なことだ。品質と信頼度の高さにおいても、日本車には及ばない。

トランプ大統領の「日本市場が閉鎖的」という批判に対して、米ウォール・ストリート・ジャーナル電子版にはアメリカ人の次のようなコメントが寄せられている。

「(米自動車を買わない理由は)日本車の方が性能もいいし、維持費が安いからだ」

「米自動車より、メンテナンスが簡単で、長い期間乗れる」

「米自動車メーカーが日本人の需要に応えてないのは、日本人のせいではないだろうに」

また、安全規制を緩和しなければ参入できない車に、日本人が飛びつくとは思えない。規制水準そのものの是非はともかく、日本人の安全意識や環境意識は、相当高い。

大人気のドイツ車も同じ条件

さらに、同じ条件で参入している「メルセデス・ベンツ」「BMW」「フォルクス・ヴァーゲン」などのドイツ車は、日本でも人気だ。輸入車のうち約7割ものシェアを占めている。これはドイツ車の多くが日本人のニーズに合わせ、車を改良しているからだ。

アメリカの車が日本で売れないのは、「非関税障壁」以前に、ニーズへの対応の問題があるだろう。

日本とアメリカのよりよい関係とは

日米の友好な経済関係のことを考えても、「自動車の参入障壁」を巡って議論をするのは、お互いのメリットにならない。

アメリカ側の顔を立てるなら、他の方法も考えられる。

例えば、アメリカに進出している日本の自動車メーカーも、肝心の生産工場は他の途上国に置くなど、アメリカ国内での生産率は50%以下だという。アメリカ国内での生産割合を上げる代わりに、制裁関税などを回避するといった「取引」も、あり得なくは無い。

トランプ政権下では、日本もアメリカも繁栄させるWin-Winの関係をつくることが重要となってくるだろう。

(HS政経塾 山本慈)

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