Rodrigo Reyes Marin/アフロ

《本記事のポイント》

  • ヤマトのアマゾンの運賃は平均以下
  • アマゾンの経営は人間機械説?
  • グローバル企業特有の問題も浮き彫りに

宅配業界でシェア約5割を誇るヤマト運輸が揺れている――。

2月下旬、一部のドライバーが昼食休憩すらとれず、長時間労働が常態化していることが判明した。ヤマトはサービス見直しなどで労働環境を改善させるとしている。

背景には、インターネット通販の急成長を受け、宅配業者が「送料無料」「即日配達」などのサービスを展開し、競争が激しくなっていることがある。

アマゾンの運賃は平均以下

ドライバーの負担が大きくなった一因は、米通販大手アマゾンの配送だ。ヤマトは年17億個(2015年度)を超える荷物を配達している。うちアマゾンは約3億個で全体の2割弱を占め、増加傾向にある。

アマゾンは最大の顧客であるが、運賃は適正価格とは言えない水準である。1個当たりの単価は約250円で、ヤマトの平均単価約570円を大きく下回る。

あまりの安さに、佐川急便は13年にアマゾンの宅配から撤退した。その後、佐川の売上は少し下がったものの、逆に本業での利益は大幅に増加。一方のヤマトは、アマゾンの配送で売上が伸びたが、利益は減っている(下図)。

つまり、アマゾンにとって、ヤマトは「安上がりの下請け」と言える。問題発覚を受け、ヤマトは大口顧客と運賃交渉を行う予定だが、労働問題の改善につなげるためにも、適正な価格にすべきであろう。

人間機械説の経営か?

アマゾンは1994年に創業した若い企業で、”効率至上主義”の経営で急拡大している。

同社のアメリカの倉庫では、極端なまでに効率性を求めている。従業員は、巨大な倉庫を歩いて商品を収集・配送する作業を行う。商品の地点を示す端末には、取りに行くまでの制限時間がカウントダウンされ、食事時間も「29分59秒」という形で定められている。

あらゆる作業が秒刻みで管理される従業員に考える暇はなく、精神的に追い詰められてしまうわけだ。これを見ると、英作家ジョージ・オーウェルが警告したように、人間性より効率性を優先する「人間の機械化」に立脚した経営を想起してしまう。

グローバル企業特有の問題も

さらにアマゾンは、グローバル企業特有の問題も抱えている。各国の税制の違いを利用し、進出した国に税金をほとんど納めていない。

オーストリアのケルン首相は、アマゾンなどの自国への納税額は、ソーセージを売る屋台1軒分より少ないと批判している。

日本でも、国税庁が2009年に、課税漏れに対して罰則を課そうとしたところ、アマゾンは「アメリカで納税している」と言い張り、結局、課税はできずじまいに終わった。日本で約1兆円の売上をあげているのに、税金をまともに納めないのは異常である。

グローバリズムの先には何がくるのか。ヤマトのドライバーの”犠牲”はそのしわ寄せが具体化したものと言える。

(山本慧)

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