朴槿恵大統領の弾劾訴追、相次ぐ北朝鮮のミサイル発射、金正恩氏の兄・正男氏の殺害……。国内外にさまざまな問題を抱える韓国は、今、どこに向かおうとしているのか。

韓国・釜山の日本領事館前に設置された慰安婦像について、韓国外務省はこのほど開いた会見で、釜山市などに対して像の移転を求める文書を送っていたことを明かした。

同省報道官は、「外交公館の保護に関する国際儀礼や慣行の面から、少女像の位置が望ましくないという立場を関連自治体に伝えた」と述べた。またソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像についても、「政府としては、設置位置が適切ではないとの立場だ」と語った(23日付産経ニュース)。

「移転」ではなく「撤去」すべき

そもそも、慰安婦像の設置自体が日韓合意に反しているため、2015年末に合意をした時点で、慰安婦像は「移転」どころか「撤去」されるべきだった。しかし韓国政府は、「少女像(撤去)は政府が決める事案ではない」などと繰り返し、対処してこなかった。

日韓合意は、日本政府が元慰安婦を支援する韓国の財団に10億円を拠出する代わりに、日韓両国が慰安婦問題を「最終的かつ不可逆に解決させる」という取り決めだ。

しかし2016年末、釜山の日本総領事館前に、歩道を管理する区の許可を得ず、韓国の市民団体らが「像」の設置を強行したことを受け、日本政府は長嶺安政・駐韓大使らを一時帰国させるなどの対抗措置をとった。

問題をうやむやにした日本の罪は重い

だが、第2次大戦中、日本政府や日本軍が組織的に韓国の女性を強制連行して慰安婦にした、という事実はない。

1980年代に文筆家の吉田清治氏が「日本軍が朝鮮人女性を強制連行し、慰安婦にした」という虚偽の証言を行い、それを朝日新聞が繰り返し報じたことで、慰安婦問題が既成事実化されてしまった。そもそも、1965年の日韓基本条約で両国の戦後賠償は解決しているし、この時点で慰安婦問題は議題にすら上がっていなかった。

それは、貧しさなどを理由に売春を生業とする女性がいたことは事実だが、「強制連行」「性奴隷」という事実は存在しなかったからだ。

もちろん、問題を蒸し返さないという約束の代わりに10億円という事実上の賠償金を支払って、問題をうやむやにしようとした日本政府の罪は重い。結果的に、国際社会には「日本は朝鮮人女性を強制連行し、性奴隷にしたことを認め、10億円を払った」と認識されてしまっている。完全な外交的敗北である。

韓国と日本に求められること

現在、韓国では、大統領の弾劾訴追問題をはじめ、贈収賄に財閥幹部の関与が疑われるなど、政府と国民の心が完全に離れてしまっている。そうした中で、有力な次期大統領候補として北朝鮮寄りの人物の名前が挙がっているが、その北朝鮮からはたびたびミサイルが発射されている。金正男氏の殺害も重なり、朝鮮半島は一気に混乱の度合いを強めている。

本来、韓国には、自由や民主主義という価値観を大事にする日本やアメリカと力を合わせ、北朝鮮や中国を民主化させる役割があるはずだ。

今後、韓国は、次期大統領の選出、北朝鮮への対応、日本との歴史問題、米トランプ政権へのスタンスなど、さまざまな課題に答えを出していかなければいけない。その時に必要なのは、恨み心など一時の感情で国の舵取りを誤らせるのではなく、「正しさとは何か」を真摯に追究する姿勢ではないか。

それを実現させるためにも、隣国の日本は、歴史問題などでその場しのぎの合意を行うのではなく、真実を求める毅然とした姿勢を貫く必要がある。(桃/格)

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