《本記事のポイント》

  • イスラエルの閣僚が初めて杉原千畝氏の墓を参拝。
  • 杉原千畝氏だけでなく、東條英機などもユダヤ人救済に動いていた。
  • 「命のビザ」は、日本の名誉回復のために語られるべき。

「命のビザ」を発行し、6000人ものユダヤ人を救ったとして、今なお多くのユダヤ人から感謝されている外交官・杉原千畝氏の墓(神奈川県鎌倉市)を、イスラエルのモシェ・カハロン財務相と、ルツ・カハノフ駐日大使が参拝した。イスラエル側によれば、同国の閣僚による参拝は初だという。

カハロン財務相は、「ユダヤ人を救った杉原氏に、政府の一人としてお礼を申し上げる。世界でいろいろなことが起きている今、杉原氏のような人が必要だ」と功績を称えた。

杉原氏の四男でベルギー在住の杉原伸生(のぶき)氏は、「わざわざ訪れてくれて、父も喜んでいるだろう。(日本と)ユダヤ人とのつながりが深くなり、中東和平のお役に立てればうれしい」と述べた。各紙が報じた。

ユダヤ人を救った東條英機

正義に生きた杉原千畝氏の姿は、日本のみならず、全世界の人々へ感動を与えている。今回の参拝は、杉原氏の功績が再評価されるきっかけとなるだろう。

しかし、杉原氏がヒーロー扱いされる背景に、「ファシズムに走る日本において、唯一人道主義を解した人物だ」とする見方があるならば、誤った歴史認識であると言わざるを得ない。

中国政府は「日本は南京で30万人もの人を虐殺した」と主張し、アメリカなどの欧米諸国では、「野蛮な侵略国日本との戦争を終わらせるため、やむを得ず原爆を投下した」などという歴史観がまかり通っている。しかし、中国政府が「アジアのヒトラー」のように喧伝する東條英機が大戦中にユダヤ人を救ったという事実はほとんど知られていない。

第二次世界大戦が勃発する直前。ナチスによるユダヤ人迫害が強まる中、数百万人のユダヤ人が国外に逃げ出していた。ドイツと防共協定を結んでいた日本政府がユダヤ人を保護すれば、ドイツとの協力関係が危うくなるのは必定であった。しかし、当時陸軍に所属していた樋口季一郎はユダヤ人の保護を決断した。

当然のごとくドイツ政府からは同氏の処分を求める声があがった。しかし、樋口の上司であった東條は「人道上、当然なる措置である」と要求を突っぱね、それどころか樋口を栄進させたのだ。

これは、日本が国家レベルで人道主義を貫いていたことが分かる事例だ。

杉原千畝氏が願うものとは

2015年末、大川隆法・幸福の科学総裁は杉原千畝氏の霊を招霊し、外交における正義論について聞いた(『日本外交の正義論』所収)。

杉原氏の霊は、自身の功績が称賛を受けていることに対して次のように述べた。

「日本の名誉を回復するために私の活動を使ってくださることはありがたいが、私個人の名誉のための活動は希望していません。私個人は、本当にたまたま、はぐれ外交官として衝動的に行ったことだろうと思いますので、私個人の名誉のためにはやってほしくない」

正義を貫く生き方、精神性は、多くの人々に感化を与え、感動を呼ぶものである。その生きざまから学ぶべきことは多い。

しかし、杉原氏の命をかけた行為が、「日本が侵略国家であった」という歴史観を逆説的に浮かび上がらせる手段として使われるならば、それは氏に対する冒涜でもあろう。杉原氏が霊言で願ったように、日本の名誉回復のためにこそ、「命のビザ」は語られるべきだろう。

(片岡眞有子)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『杉原千畝に聞く 日本外交の正義論』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1607

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