安倍晋三首相とオバマ米大統領は27日午前(日本時間28日朝)、1941年に旧日本軍が攻撃したハワイの真珠湾を訪れ、犠牲者を慰霊した。首相はこの後の演説で、二度と戦争を繰り返さない決意を表明し、戦後に強い同盟を築いた日米の「和解の力」を強調した。

真珠湾攻撃の犠牲者の慰霊をした安倍首相

安倍首相は演説の中で以下の趣旨のことを述べた。

  • 祖国を守る崇高な任務のため、アメリカ各地から来ていた兵士たちが紅蓮の炎の中で死んでいった。日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々の御霊に、ここから始まった戦いが奪った、すべての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった数知れぬ無辜の民の魂に、永劫の、哀悼の誠を捧げる。

  • 戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない。日本は戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら、不戦の誓いを貫いてきた。戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに静かな誇りを感じながら、この不動の方針を貫いていく。

  • 日本国民を代表し、米国が、世界が、日本に示してくれた寛容に、心からの感謝を申し上げる。

  • 歴史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国となった。それは、世界を覆う幾多の困難に、ともに立ち向かう同盟でもある。明日を拓く、「希望の同盟」である。私たちを結びつけたものは、寛容の心がもたらした、The Power of Reconciliation、「和解の力」である。

  • 共通の価値のもと、友情と信頼を育てた日米は、寛容の大切さと和解の力を、世界に向かって訴え続けていく、任務を帯びている。

誤ったメッセージを発信する恐れ

日本の安全保障の面においても、世界の秩序を守る意味においても、日米同盟の強化は不可欠であることは確かだ。しかし、安倍首相の真珠湾訪問は、歴史認識の問題において、本来、日本が否定すべき「戦勝国史観」を肯定することにつながりかねない。

アメリカでは、「真珠湾攻撃によってアメリカは大戦に巻き込まれた」「真珠湾攻撃は奇襲でありスニーク・アタック(卑怯な攻撃)」という考え方が常識となっている。

しかし、日本側から戦争を仕掛けたのではなく、当時のルーズベルト米大統領が、日本を戦争に踏み込まざるを得ない状況に追い込んだ背景がある。この前提を見直さないまま和解に進むことは、日本は侵略的な国家だという誤ったメッセージを世界に発信することになりかねない。

実際に、次のような動きも出始めている。

日米の歴史学者ら約50人が25日、安倍首相宛てに「公開質問状」を発表。その中では、安倍首相が真珠湾攻撃で死亡した約2400人のアメリカ人を慰霊するのであれば、中国や、朝鮮半島、他のアジア太平洋諸国、他の連合国における数千万にも上る戦争被害者も「慰霊」する必要があるのではないかと主張している。

靖国を訪問できない首相がハワイで慰霊?

真珠湾訪問の目的を「犠牲者の慰霊のため」とした安倍首相。だが、本当に慰霊すべきは、日本を守るために戦った先人たちではないか。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『繁栄への決断』の中で、安倍首相が真珠湾に「慰霊」に行くことには大きな矛盾があると述べている。

首相官邸から、わずか数分の靖国神社に祀られている二百五十万の英霊に対し、慰霊することができないにもかかわらず、ハワイに慰霊に行ける首相とは、いったい何者であるのか

世界では、戦死した自国の兵士たちへの敬意を表し、慰霊することは常識である。左翼的なメディアや国民の批判を受け、靖国に参拝できずにいるにもかかわらず、オバマ大統領が広島訪問をしたから、こちらも真珠湾の犠牲者を慰霊するというのは、一国のリーダーとしての見識に欠けているのではないか。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『繁栄への決断 ~「トランプ革命」と日本の「新しい選択」』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1785

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