EU諸国で左派勢力が後退しつつある。

フランスのフランソワ・オランド大統領が、来年4~5月に行われる大統領選に再出馬しない意向を国民向けのテレビ演説で表明した。3日各紙が報じた。

ヨーロッパ各国で苦戦する左派勢力

オランド氏の支持率は低迷が続き、10月には10%から4%へ下落している。現在、有力候補として、中道右派・共和党のフランソワ・フィヨン元首相、極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン氏らが注目されている。特にルペン氏は移民などに対し排外主義を掲げており、移民政策に関して暴言の目立ったドナルド・トランプ氏の大統領選勝利の流れに乗るのではとの見方もある。

イタリアでも、中道左派のマッテオ・レンツィ首相が岐路に立たされている。

レンツィ氏は、上院の権限を縮小して国会の意思決定を早め、エネルギー政策等に関して地方政府がもつ権限の多くを政府に集約する改憲案を提示しており、その改憲案をめぐる国民投票が4日に行われる。改憲案が否決されてレンツィ氏が退陣に追い込まれ、解散総選挙が行われた場合、EU懐疑派の政党「五つ星運動」の台頭が予想される。

またオーストリアでも、4日に行われる大統領選を巡って、環境保護や人権擁護に力を注ぐ、左派の緑の党アレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏と、極右政党自由党のノルベルト・ホーファー氏が接戦を繰り広げている。

今回のオーストリア大統領選は、自由党vs.緑の党を含めた反極右勢力という構造をとっている。また、ホーファー氏はEU離脱の国民投票を訴えたこともあり、EU離脱勢力vs.反離脱勢力の戦いと見ることもできる。

イギリスでも、EU離脱を訴えた右翼政党、英国独立党の党首ナイジェル・ファラージ氏の駐米大使就任にトランプ氏が期待を示したこともあり、注目が集まっている。

その他、ドイツでも2017年秋の議会選で反EU政党の躍進が予想されているなど、各国で左派後退の兆しが見られる。

まずは自国を立て直す

左派勢力の後退は、欧州の人々のEUへの疑念と「まず自国を」という思いの表れだ。

英国のEU離脱が決まった際に議論されたように、左派勢力が弱まっている原因の一つは、EU各国に課された、債務残高、財政赤字を制限する、罰則を伴った厳しい財政規律が挙げられる。

そのため、「大きな政府」志向である左派政権も、緊縮財政政策を打ち出さざるを得なくなり、弱者救済のための再配分政策が取れない状況にある。もちろん、「大きな政府」を目指した政策で経済発展が成し遂げられるかは疑問だが、厳しい財政規律が各国の自由な経済政策の選択肢を奪っていることは確かだ。

また、EUに加盟している以上、移民問題など、財政規律以外でも足並みを揃えなければならない。経済的な低迷が続く欧州では、全体としては失業率が下がっているものの、移民によって職が奪われるといった懸念などもあって反発が強まっている。移民排斥を訴える極右政党に支持が集まっていることにも、それが現れている。

EUは、経済力にばらつきのある小国が集まっており、弱小国が経済的に豊かな国にしがみつく構図が見られ、欧州の経済的発展を阻害している。やはりEUのように、多数の国を一つの原則の下に統治しようという試みには無理がある。その点、各国の自立と成長を促す反EUの流れは欧州にプラスの影響をもたらすかもしれない。

ただ、他国を排斥するナショナリズムや一国繁栄主義に陥るのもまた問題である。極右と極左は、どちらも最終的に全体主義へとつながっていく。極右政党の台頭には、一定の注意を向けておく必要がある。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『理想国家日本の条件』(幸福の科学出版)で、以下のように述べている。「『ボーダーレス・エコノミー』『ボーダーレス・ワールド』という、こうした心地よい言葉が耳に響いたときに、それを無前提によいことだと考えがちですが、アメリカが赤字国家になった理由は、実はそれによるわけです。(中略)国民はその国家に責任を負い、国家は国民に責任を負う。そして、その国を豊かで、理想的なるものにすることは、まずその国自身の責任であり、豊かで理想的なる国をつくり、そして各国の利益を世界の利益と調和させるところに、理想の世界国家関係が成り立つのだ、ということを知らなければなりません」

まずは自国が自立しなければ、国家間での協力体制は難しいということだ。一方で、自国のみよかれと考え、他国との調和を無視するようなあり方も間違っている。それぞれの国に住む人々が自国を愛し、発展させた上で、国家間の騎士道精神を実践していくべきだ。(祐)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『理想国家日本の条件』 大川隆法著

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