これまで国が主導してきた宇宙関連事業への民間企業の参入が相次いでいる。

キヤノンは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が手掛けるミニロケットの開発に参入することを発表した。精密機器で蓄積したノウハウを生かし、機体の制御システムを供給するという。2日付各紙が報じた。

また、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)と大手航空会社のANAホールディングスが宇宙船開発ベンチャーに出資すると発表。2023年の宇宙旅行の事業化を目指している。今後、ANAホールディングスは宇宙輸送機の客室の仕様やパイロットの育成に協力し、HISは宇宙旅行や輸送サービスの展開を担うことになる。

「宇宙活動法」などの法律も成立

欧米をはじめとする海外では、宇宙産業への民間企業の参入が進んでいる。しかし、日本の宇宙産業は、まだ政府やJAXAが主導している。宇宙機器産業の売上高は約3000億円とされているが、その約9割を政府主導の事業が占めている。

民間企業の宇宙産業への参入には、宇宙ビジネスの環境を整える法律の制定も必要になる。11月には、日本が国際的な宇宙ビジネスの拡大を目指す「宇宙活動法」と、商業衛星による画像の利用や管理を規制する「衛星リモートセンシング法」の2つの法律が成立した。今後、ますますベンチャー企業の参入が増えることが期待される。

宇宙産業による地方創生も

今後、宇宙開発が進展することによって、宇宙センターや研究所が地方に多く建設されるようになると、その地域に人や資本が集中し、産業の振興につながる可能性もある。本誌1月号記事「北海道『収入倍増』計画」の中で紹介した北海道の大樹町は、本格的な宇宙基地を設置する構想を描き、宇宙関連企業を誘致している。

これまで宇宙産業といえば、気象観測や防衛など、国が発注する大型の事業が多かった。今後は、農業や漁業のための地表観察や、災害の把握など、さまざまな分野での利用が増え、宇宙技術の転用の需要も伸びる見通しだ。宇宙旅行ができるようになれば、さらに経済効果が見込めるだろう。

今後も、さまざまな法整備とともに、民間企業や宇宙ベンチャー企業が参入し、日本の宇宙開発のスピードが速まることを期待したい。

(小林真由美)

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