日本国憲法の公布から11月3日で70年を迎えた。大手紙はそれぞれ憲法を取り上げ、独自の主張を展開している。

朝日・東京は護憲論を主張

朝日新聞は、「押しつけ憲法論は現実逃避」と題した編集委員コラムを掲載。現行憲法は、アメリカが急ごしらえで作ったとする「押しつけ憲法」との批判を「(グローバル化や高齢化などの)途方に暮れるほどの難題を憲法問題にことよせて、自主憲法にすれば新しいステージに踏み出せるような幻想を振りまく。それが『押しつけ憲法論』の正体だろう」として退け、現行憲法を肯定的に報じた。

東京新聞は、憲法の公布を祝う当時の記念行事を取り上げ、それについての川島高峰・明治大学准教授のコメントを紹介。川島氏は、「戦時中に抑圧されていた権利や民主主義を、人々がようやく実感できた画期的な一日だった」と述べ、現行憲法が国民に権利を保障したとしている。

産経は護憲派を批判

一方で、産経新聞は、朝日新聞が批判した「押しつけ憲法論」を展開。アメリカのバイデン副大統領が8月15日の演説で述べた「日本国憲法を、私たちが書いた」との言葉を引用し、「憲法を押し付けた側が当然の事実としてそれを認めているのに、押し付けられた側が必死に否定しようとしても無駄な抵抗である」と主張している。

各紙の中で特筆すべきは、読売新聞の記事だ。同紙は、国会議員を対象にした憲法に関するアンケート調査を実施。それによると、回答した議員のうち、「改正する方がよい」と答えた議員は73%に達したという。多くの議員は、現行憲法が現実に即していないという問題認識を持っていると言える。

現行憲法は民主主義をもたらした!?

本欄が注目したいのは、東京新聞の記事だ。川島氏が述べたように、未だに「現行憲法によって、日本に民主主義がもたらされた」という意見が根強くある。

これは、アメリカ側もそう認識しているようだ。産経新聞は、「駒沢大名誉教授の西修氏によると、ブッシュ前米大統領も就任前の1999年11月の演説でこう語った。『われわれは、日本を打ち負かした国である。そして食料を配給し、憲法を書き、労働組合を奨励し、女性に参政権を与えた』」と報じている。

戦前の日本には、民主主義がなく、国民は抑圧された生活を強いられたのだろうか。だが、皮肉なことに、現行憲法こそ、民主主義的ではない側面がある。

占領軍がお墨付きを与えた憲法

現行憲法の草案は、国会で議論されたものの、主権者である国民の直接投票を経ずに制定されたものであり、国民の負託を受けていないといえる。

また当時、占領軍の統治によって、メディアの「言論の自由」は制約されていた。ゆえに、世論が憲法草案に反映される余地はなく、「占領軍がお墨付きを与えた憲法」との指摘を否定することはできない。

さらに戦前では、男子普通選挙が実施されたり、憲法論をめぐる政治運動「大正デモクラシー」が起きたりするなど、民主主義が実現されていた歴史もある。「アメリカが日本に民主主義をもたらした」という考えは傲慢に過ぎるわけだ。

もし、「民主主義をもたらすことが正義」なら、アメリカによる中東への軍事介入もまた、全面的に肯定されることになる。護憲派は現行憲法を評価すればするほど、現在のアメリカ外交を肯定するという逆説が生じてしまうだろう。

そうした憲法の欺瞞だけではなく、近年では、日本国民の安全・安心が脅かされつつあるという矛盾も明らかになっている。軍事国家である中国や、北朝鮮による恫喝外交が終わる気配はない。東南アジア各国が抑止力を高めるために軍事費を増強しているのは、その証左と言える。

憲法改正に向けた議論が高まることを期待したい。

(山本慧)

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