2016年12月号記事

株式会社ハイボット 代表取締役会長

広瀬 茂男

(ひろせ・しげお)ロボット研究者。東京工業大学名誉教授。ヘビ型ロボットや四足歩行ロボットなどを開発してきた世界的権威。2001年文部科学大臣賞、2006年紫綬褒章、2009年エンゲルバーガー賞を授賞。

未来産業のたまご

第9回

ロボット・クリエーターの創造性の秘密

人間の役に立ってこそ、工学の意味がある──。そう考え、数多くのロボットを生みだしてきた研究者に創造力の源を聞いた。

ぐねぐねと、まるで本物のヘビのように動くヘビ型ロボット。水道管やガス管の中、人が入れない危険な場所で、点検ロボットとして活躍している。

このヘビ型ロボットをはじめ、150台以上のロボットを開発してきたのが、東京工業大学名誉教授で株式会社ハイボットの代表取締役会長・広瀬茂男氏だ。

世界初のヘビ型ロボット

上/水中を泳ぐヘビ型ロボット「ACM-R5」。下/自作のセンサーを取り付けたヘビ。

「研究は、世界で唯一のものでなければ意味がない」

そう語る広瀬氏は、ヘビ型ロボットの草分け的存在だ。

大学院に進む前の1971年ごろ、従来の機械にはない、ぐにゃぐにゃとした動きが可能な「やわらかい機械」の存在を本で知り、関心を持った。大学院に進み、研究室で出会ったのが、ヘビ型ロボットの研究。開発は始まったばかりで、ヘビの動きの解析すら、ほとんど行われていなかった。そこで、本物のヘビを手に入れるところから始めた。

「当時、渋谷の宮益坂の下に蛇料理屋があったのですが、そこでヘビを1匹1500円で買ってきました。自作のセンサーや筋電計をヘビに付けて、動く時にどんな力が出るかを測りました。

実験室からヘビが逃げて騒ぎになったり、新人の秘書さんがあいさつに来たときには、ヘビがひょっと動いたものだから、すごい声で叫んで逃げてしまったこともありました(笑)」(広瀬氏)

手探りの中で研究を重ね、ついに世界初となるヘビ型ロボットを完成させた。国際会議で初めて発表すると、高く評価された。

広瀬氏は大学院時代、研究発表のたびに、将来つくりたいヘビ型ロボットの漫画を描いていたという。

「胃カメラロボットや、宇宙船の中でとぐろを巻いて、ニョロニョロ出てくるロボット、極地探検をするロボット──。そんな変わったロボットができるといつも話していました」(同)

成功する経営者はまずビジョンを描くというが、ロボット開発も同じなのかもしれない。数多くのアイデアが、実験を積み重ねることで現実化していった。