蔡英文総統は「近い将来、台湾と日本は海洋分野の協力について協議を開始する」とし、開始時期について「今月の可能性を排除しない」と述べた。台湾総統府が7日に公表した読売新聞とのインタビューで明かした。蔡総統は、関係強化と域内の一段の安定に向け、安倍晋三首相と協力することに期待を示している。

蔡政権に対してエスカレートする中国の圧力

中国は、台湾も領土の一つと考えており、台湾併合は建国以来の悲願でもある。そのため、「中国の習近平氏は、中国共産党創立100周年を迎える2021年に、台湾を支配することを狙っている」と指摘する中国専門家もいる。

今年の5月に、台湾人の圧倒的な支持を得て発足した民進党の蔡政権は、親中派の国民党・馬英九前政権とは打って変わって、中国との関係を「現状維持」すると主張してきた。

中国との統一を望まない蔡政権に代わってから、中国の台湾への圧力は高まっている。その一つの事例として、中国からの圧力によって、台湾がさまざまな国際会議から締め出され、国際活動が制限されている動きがある。

例えば5月に開かれた世界保健機関(WHO)年次総会の招待状には、例年と異なり、中国大陸と台湾が不可分であるとする「一つの中国」の原則を強調する特記事項が記されていた。また、9月の国際民間航空機関(ICAO)総会への台湾の参加が認められなかった。

こうした状況を受け、蔡氏は4日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで「最近の中国は再び以前のような圧力と分断の道に逆戻りしているようだ」と指摘。早速、中国国務院台湾事務弁公室は、「(中国を)みくびってはならない」と警告している。

中台関係は日本の防衛と国益に直結

沖縄と台湾の距離は、たったの110キロメートルであり、中台関係は、日本にとっても無縁ではない。もし中国が台湾を併呑して、台湾に軍事基地をつくれば、台湾はたちまち中国の"不沈空母"となってしまう。当然ながら、日本の沖縄防衛はいっそう困難になり、日本の船が通る海上交通路(シーレーン)も脅かされる。こう考えると、日本と台湾は間違いなく「運命共同体」といえる。

本誌では6月、蔡政権で国防を担う国家安全会議副秘書長の陳文政氏に、就任直前に話を聞いた。

陳文成氏は、台湾の国防戦略について、次のように述べていた。

「台湾の国防戦略は、他国の力を頼りすぎずに、自主防衛体制を整えています。日本も、あまりアメリカの力にばかり頼ってはいけないと思います。まずは、互いに自分の力で自国を守る必要があるのです」

「現状の日台の外交・防衛の協力関係はゼロに近いので、いきなり国防の連携まで深めるのは非常に難しい(中略) 日本と台湾は、中国を刺激しないように、一歩一歩、ステップを踏みながら接近した方がいいのです」(2016年8月号 本誌記事より)

一歩一歩関係を深め、「台湾関係法」の成立を

今回の蔡政権の「日台海洋対話」への期待は、まさにその第一歩といえる。アメリカは、台湾有事の際に米軍を出動して台湾を守る「台湾関係法」を制定している。日本の国防における台湾の重要性を考えれば、日本もなるべく早く「台湾関係法」を制定し、日米共同で台湾を防衛する体制を整えることが必要だ。

日本は、伝統的に親日的で、民主主義や人権などの価値観を共有する台湾との関係を強化することで、アジアの海で急速な軍拡を続ける中国をけん制することが必要だ。台湾を「国」と認めていない日本政府が、台湾のこうした求めにどこまで応じられるのか、注目されている。

(小林真由美)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『緊急・守護霊インタビュー 台湾新総統 蔡英文の未来戦略』 大川隆法著

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